旬の数字 2018年5月16日

潜伏キリシタン 世界遺産へ! 登録されれば国内の世界遺産は22件に



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

皆さんは「世界遺産」に登録されている国内の地域をどのくらい知っていますか?
その場所に行ったことがありますか。その場所に行ってみたいと思いませんか。

先日5月4日、文化庁は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本県)について、ユネスコの諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)が「登録が適当」とユネスコに勧告したと発表しました。

世界遺産への登録は、6月24日~7月4日にかけてバーレーンで開催される世界遺産委員会で正式に決まります。事前の勧告が尊重されるケースが多いそうで、今回の「潜伏キリシタン関連遺産」の登録が決定すると、国内の世界遺産は22件目となります。

これまでの国内の世界遺産21件の内訳は、文化遺産が17件、自然遺産が4件で、今回の「潜伏キリシタン関連遺産」が決まると18件目の文化遺産となります。

皆さんは、世界遺産への登録が決まり話題になると、「行ってみよう」と思ったりしませんか。

実際、世界遺産への登録が決まると、知名度向上などの影響により、観光客が大幅に増えるそうです。2014年に文化遺産に登録された「富岡製糸場と絹産業遺産群」の「富岡製糸場」(群馬県富岡市)では、14年度の入場者数が前年度の4.3倍の約133万人に急増したとのこと。しかし、2017年度には63万人とピーク時の半分に落ち込んだそうです。

たしかに、世界遺産に登録されるとメディア等での露出が増え、「行ってみよう」と思いますよね。でも、しばらくたつと「そういえば、そんな所もあったな」となってしまいませんか。

世界遺産に登録された地域は、当初は観光客増などの経済効果の恩恵を受けるものの、その後の人気を維持することが課題となることが多いそうです。

そもそも「世界遺産」は、観光客増加・経済効果のためではなく、「文化・自然遺産を人類全体の遺産として保護・保存する目的」(世界遺産条約)があるので、あまり経済面ばかりを注目するのは、趣旨がずれたことになってしまいます。

個人的には、今回の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の話題によって、2点勉強になったことがあります。「隠れキリシタン」と「潜伏キリシタン」が微妙に違うということ。「天草」は熊本県だったということです。

知っている人は当然のことかもしれませんが、知らなかった人にとっては、世界遺産は、歴史・地理の学び直し効果がありそうですね。

出所:
日経新聞電子版 ※最終アクセス 2018年5月16日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30129310U8A500C1CC1000/


執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)