業界ウォッチ 2018年6月18日

教員のちょっと気になる「海外在留邦人数」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「海外在留邦人数」を取り上げてご紹介いたします。

先日(5月31日)、外務省は2017年(10月1日時点)の海外在留邦人数を発表しました。前年同期比1.0%増の135万1970人となっており、過去最多を更新しました。

海外在留邦人統計では、海外在住の日本人を、「(3カ月以上の)長期滞在者」と「永住者」の合計で算出していますが、長期滞在者が0.3%減の86万7820人、永住者が3.4%増の48万4150人でした。在留期間が3カ月未満の短期滞在者は「海外在留邦人数」からは除外されています。

海外在住の日本人が増えているとして、どの地域、どの国が多いのでしょうか。増えている国と減っている国があるのかどうか、どのようなトレンドがあるのか、実際に数字で確認してみたいと思います。「海外在留邦人数調査統計」で2002年から2017年の15年間で推移を見てみたいと思います。

まず地域別の推移を見ると、「北米」が最も多く2002年の35.2万人から2017年には49.6万人へと約14万人増加しています。次いで多いのは「アジア」で、2002年に18.8万人でしたが、2017 年には39.3万人と2倍以上に増加しており、増加数は約21万人となっています。「北米」と「アジア」を合わせると、2017年の海外在留邦人全体の約65.8%を占めています。

それでは、国別のトレンドを見てみたいと思います。

国別でみた場合、2017年時点で最も多いのは米国で、2002年に31.6万人で、その後増加し続け、2017年には42.6万人となり、その間、約16万人増加しています。米国はダントツ1位で、2位の中国の3倍以上の数となっています。2位の中国は、2002年に6.4万人で2015年に15万人と過去最高を記録しましたが、それ以降は減少傾向となり、2017年には12.4万人となっています。3位は豪州(オーストラリア)で、4位がタイとなっており、いずれも2002年から2017年にかけて増加し続けています。

5位以降の国のトレンドを見ると、5位カナダも概ね2002年から増加し続けています。6位の英国は2002年から2007年まで増加し続けますが、2009年にかけてリーマンショックの影響で一時落ち込みますが、その後横ばいから微増に転じています。2015年に過去最高の約6.8万人となりましたが、以降はBrexit(英国のEU離脱)問題の影響からか、減少傾向に転じています。

7位のブラジルは、2002年は約7.2万人と米国に次いで2位で、中国よりも多かったのですが、以降減少トレンドが続き2017年には5.2万人と過去最低となっています。

8位のドイツは、若干の上下があるものの、概ね増加トレンドを示しています。

このように国別のトレンドを見ると、日本人が海外のどの国を注目しているのか、傾向値がよく分かります。特に、中国が減少傾向に入り、豪州、タイが伸びてきており、このままのトレンドだと、中国を超す可能性もありそうです。欧州では、英国が減少トレンドに入り、ドイツの増加トレンドが強くなっており、欧州内での勢力の違いが見えてきます。

しかし、タイは親日国でアジアの中で日本人が多いと思っていましたが、世界全体で見ても4位にまで浮上しているとは驚きでした。過去の記憶やイメージだけではなく、統計も見た上で、トレンドを把握しておくことは大事ですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)