業界ウォッチ 2018年6月25日

教員のちょっと気になる「メディア接触時間」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「メディア接触時間」を取り上げてご紹介いたします。

先日、博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が「メディア定点調査2018」における事例列分析レポートを発表しました。

同調査は2006年からの推移のデータが掲載されており、2018年のメディア総接触時間が396.0分(1日当たり、週平均)と過去最高を記録しました。毎年定期的に発表されているデータなので、ご覧になったことがある方も多いかもしれませんね。

ここ数年の調査結果から、テレビの接触時間の低下、携帯電話・スマートフォンの接触時間の増加などが指摘されていましたが、今回(2018年)の調査結果で、それらがどうなっているのか、性別、年代別に見た場合にどうなっているのか、実際に数字で確認してみたいと思います。

まずメディア総接触時間の推移を見てみると、2006年に335.2分でしたが、2018年には396.0分と約60分程度増加しています。

メディア別の内訳を見ると、テレビが2006年は171.8分でしたが、2018年には144.0分へと約30分減少しています。2006年時点でテレビに次いで接触時間が多かったのがパソコンで、2006年は56.6分で、概ね微増・微減をした横ばい傾向で、2018年には66.6分となっています。

一方、大幅に伸びたのが携帯電話・スマートフォンで、2006年に11.0分でしたが、2018年には103.1分と約90分増加しています。また、2006年時点ではカウントされていなかったタブレット端末の接触時間が2014年からカウントされるようになり、2018年時点で29.9分となっています。

パソコン、タブレット、携帯電話・スマートフォンのデジタルメディアの総接触時間は2006年に67.6分と全体20.2%の割合でしたが、2018年には199.6分と全体の50.4%と半分を占めるようになっています。

それでは、性別・年代別(2018年)の違いを見てみたいと思います。

男女別の傾向は、多少の違いがあれ度、概ねに多様な傾向を示しています。むしろ特徴的な傾向は、年代別によく表れています。

男女ともに、年齢が上がるほどテレビ接触時間が長くなっています。テレビ接触時間は、男性15-19才が98.9分、女性15-19才が103.4分、男性20代で86.2分、女性20代で129.2分ですが、男性60代で194.7分、女性60台で212.3分となっています。若者と高齢者とではテレビ接触時間に100分近い差があることが分かります。

一方、携帯電話・スマートフォンの接触時間は、年齢が上がるほど短くなっています。男性15-19才で159.5分、女性15-19才で165.4分、男性20代で188.9分、女性20代で188.7分となっています。高齢者層では男性60代で28.4分、女性60代で33.5分となっています。若者と高齢者の差は120分(2時間)以上の差があることになります。

このように年代別のメディア接触時間の違いを見ると、テレビ等の従来4マス媒体の情報の影響を受ける高齢者層と、スマホなどのデジタルメディアの影響を受ける若者層とで大きく異なることが分かります。

メディアの年代別の違いが大きくなっている状況は、世代間による意識の違いにも表れる可能性が高くなってきそうです。世論調査なども、こうした傾向を踏まえて反映することが大事になりそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)