業界ウォッチ 2018年7月16日

教員のちょっと気になる「1世帯当たりのアイスクリームの支出額」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「1世帯当たりのアイスクリームの支出額」を取り上げてご紹介いたします。

先日6月28日に一般社団法人日本アイスクリーム協会が公表した統計によると、2017年度のアイスクリーム類販売金額は、前年度比3.5増の5,114億円と史上最高を更新したそうです。売上高の史上最高更新は5年連続だそうです。食糧産業新聞は同日6/28の記事で、 2017年の5000億円台を超えた理由として、従来報告のなかったメーカーも数社加わった他に、付加価値の高い商品増加、シニア需要の拡大、冬アイス定着といった要因を挙げています。

それでは、冬の時期のアイスクリーム消費「冬アイス」がどのくらい消費されていているのか、本当に定着・増えているのか、地域によって差があるのか、具体的な数字を見て確認してみたいと思います。

まず、月別の1世帯当たりアイスクリーム支 出金額を、2013年と2017年で比較してみたいと思います。図から、2017年の8月を除いて、全ての月で2013年を上回っており、冬場(1~2月、11~12月)の消費支出額も、2017年が2013年を上回っている ことが分かります。

2013年と2017年を比較すると、支出額増加幅は1月で126円増、2月で60円増、11月で119円増、12月で128円増となっています。

ここで、各地域(県庁所在都市47都市+主要政令都市5都市=52都市)の1世帯当たりアイスクリーム支出額を比較してみたいと思います。図では、2017年度のアイスクリーム消費額上位10都市、下位10都市を表示しています。

図を見てわかるように、上位都市に金沢市(1位、12,475円)、福島市(2位、11,361円)、青森市(3位、11,091円)、富山市(5位、10,686円)といった、北陸地方や東北地方の都市が並んでいます。2013~2017年の支出額の増加幅を見ても、金沢市が2,620円増、福島市3,453円増、青森市3,518円増、富山市627円増となっています。

ちなみに、2011年から2017年までの7年間で、金沢市が5回、富山市が2回トップとなっており、北陸地方でのアイスクリーム消費の強さが目立っています。

一方、下位の都市には、和歌山市(52位、7,618円)、那覇市(51位、7,687)、熊本市(50位、7,863円)、高松市(49位、7,962円)、鹿児島市(48位、8,030円)といった、沖縄・九州・四国地域や、太平洋側南部の和歌山市など、比較的温暖な地域が並んでいます。

金沢市がアイスクリーム支出額全国トップである理由として、加賀百万石城下町で、和菓子文化が根付いていることが指摘されています。実際に、世帯当たりの菓子類への年間支出額が10万円を超え、全国トップとな っています。ちなみに、「他の生和菓子」、「ケーキ」の年間支出額も全国トップとなっています。また冬は「こたつ文化」で、「こたつに入って冷たく甘いもの(アイスなど)を食べる習慣が根付いているのでは」という指摘もあります。

このようにみると、アイスクリームは夏だけではなく冬も消費される「通年型デザート」となっていることが分かります。しかも、温暖な地域よりも、北陸・東北などの寒い地域での消費支 出が大きいという特徴があることが分かります。

「暑い時期・暑い地域」で冷たいアイスクリームを売るだけではなく、「寒い時期に寒い地域」に冷たいアイスクリームを売るというのは、需要を作り出すという観点から参考になる点が多そうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)