業界ウォッチ 2018年7月23日

教員のちょっと気になる「上位1割の富裕層が保有する資産の割合」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「上位1割の富裕層が保有する資産の割合」を取り上げてご紹介いたします。

お金持ちとは、所得の多さで決まるのでしょうか、それとも資産の多さでしょうか。

世界的な経済トレンドとして、各国で富裕層が増えています。また、世界的なマネーの動きによって金融資産が増加しています。その一方で、各国で貧富の格差が広がっているとの指摘もなされます。そんな中、先日OECDから、OECD加盟28か国の家計保有資産の不平等さを分析したワーキングペーパーが発表されました。

同分析では、保有資産上位10%世帯が保有する資産の、全世帯が保有する資産に対する割合が、約52%(28ヵ国の平均値)であることが明らかになりました。

新興国では貧富の格差が激しいということはよく知られていますが、先進国が加盟するOECD各国の資産保有格差がどの程度なのか、国によって格差の度合いが違うのか、実際に数字で把握してみたいと思います。

先述のOECDのワーキングペーパーでは、各国の家計の保有資産(純資産)の格差が、保有資産上位1%、上位5%、上位10%の富裕層が持つ資産の割合、下位40%、下位60%が持つ資産の割合で示されています。

ここでは、上位10%と下位60%で対比して格差の度合いを見てみたいと思います。

保有資産の格差が最も大きかったのは米国で、全世帯保有資産のうち79.5%を上位10%の富裕層が占有していました。次いで格差が多かったのはオランダ(同68.3%)で、以下デンマーク(64%)、ラトビア(63.4%)、ドイツ(59.8%)の順となっています。

一方、格差が最も小さかったのはスロバキア(同34.3%)で、次いで日本(41%)、ポーランド(41.8%)、ギリシャ(42.4%)、ベルギー(42.5%)となっています。

保有資産下位60%の全世帯の保有資産に対する割合で格差を見ても、ほぼ同じ傾向となっています。オランダとデンマークは同割合が-4%、-3.9%とマイナスを示していますが、これは純資産がマイナス、すなわち負債の方が多いということを示しています。

OECD全体で、資産保有格差を見ると、やはり米国の格差の大きさが目立つ一方、日本は格差が少ない国だということがよく分かります。また、格差が大きい国には、米国、オランダ、デンマーク、ドイツなどWEF国際競争力ランキング上位の国が多いように思います。

日本は、格差が少なくて「良い国」だと評価してしまって良いのか。それとも、頑張った人がお金持ちになれる国を目指して、格差が生じることを良しとするのか。いろいろ考えさせられますね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)