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業界ウォッチ 2018/09/17

教員のちょっと気になる「企業の内部留保」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 企業の内部留保 」を取り上げてご紹介いたします。

先日(9月3日)に財務省が発表した2017年度の法人企業統計によると、企業の内部留保(利益剰余金)が446兆円と過去最高となりました。6年連続で過去最高を更新しています。

企業の内部留保が積みあがることに対し「貯めこみ過ぎ」との批判があります。麻生財務大臣は「利益の使い方がさらに先の設備投資にいかないと具合が悪い」ともコメントしています。内部留保は、現預金などの資金と考えられがちですが、実際には設備投資やM&Aに使われたりしています。

それでは、内部留保がどの程度増えているのか、設備投資に回っていないのか、何に使われているのか、実際の数値で確認したいと思います。法人企業統計で取得可能な1960年から2017年までの長期データでそれらの推移を見てみます。

まず、「内部留保」を見ると、60年から増加トレンドで、90年以降のバブル崩壊で横ばい傾向となります。その後2006年に急上昇し、以降概ね増加トレンドでしたが、アベノミクスが始まった2012年以降増加ペースが加速しています。

「現預金」をみると、バブル時の1989年(163兆円)まで増加し続けましたが、以降減少し横ばい傾向となります。2009年ごろから増加傾向となり2012年以降増加ペースが増しています。

M&Aなどによって増加する「長期保有株式」は、この推移を見ると、2006年(160兆円)まで一貫して増加していますが、2007年に134兆円へと落ち込んだのち、以降2008年から増加ペースが加速し、2017年には316兆円へと大幅に増加しています。

設備投資に関連する「有形固定資産・無形固定資産」は、1998年のピーク(511兆円)まで増加ペースで来ていましたが、2003年までに474兆円へと減少し、以降概ね横這いとなっています。

このようにみると、2000年代以降の動きとして、企業は収益が上がると、設備投資よりM&Aなど有価証券への投資に回していることが分かります。

もし、内部留保を将来への投資(設備投資やM&Aなど)に十分に活用していなければ、株主から配当還元するよう要求が高まることが考えられます。

企業の内部留保の増加をどうするのか、収益を上げた分を株主に還元するのか、それとも次の成長への機会を見出して積極的に投資していくのか、企業経営者の経営能力が試されているといえるのではないでしょうか。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)