業界ウォッチ 2018年10月1日

教員のちょっと気になる「100歳以上人口」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 100歳以上人口 」を取り上げてご紹介いたします。

毎年9月の第3月曜日は敬老の日ですが、厚生労働省はそれに合わせて百歳以上の高齢者数の数値を発表しています。

今年(2018年)の9月1日現在の100歳以上の高齢者数は約7万人(69,785人)と発表されています。これは、48年連続で過去最高を更新しているそうです。

巷では「人生100年時代」と言われることが多くなっていますが、日本の100歳以上人口は世界的にみてどの程度なのか、今後100歳以上人口がどのくらい増えるのか、それが世界的にみてどの程度の規模なのか、実際の数字を見て確認したいと思います。

まず、2018年の100歳以上人口の多い国(上位20か国)をみると、米国が7.2万人とトップで、次いで日本(6.9万人)、中国(6.8万人)、インド(3.3万人)、ベトナム(2.8万人)となっています。やはり人口の多い国が上位に来る傾向にあります。

そこで、前述上位20ヵ国のうち、対人口比(人口1万人あたり100歳以上の数)を見ると、日本がダントツのトップで5.5人、次いでベトナム(2.86人)、イタリア(2.83人)、チリ(2.8人)、フランス(2.6人)の順となっています。

長期予測で2050年に100歳以上人口がどの位になるのか見てみると、トップは中国で51万人になると予測されています。次いで日本(45万人)、米国(26万人)、ブラジル(23万人)、インド(16.6万人)の順となっています。同様に2050年の対人口比を見ると、日本がダントツのトップで41人、次いでフランス(16人)、ブラジル(9.9人)、バングラデシュ(7.5人)、米国(6.8人)となっています。

国際比較でみると、100歳以上の絶対数では、日本の他に米国、中国、インド、ブラジル、バングラデシュ、ベトナム等人口の比較的多い国が上位に来ていることが分かります。中国は日本とほぼ同水準ですが、2018年時点でトップの米国が2050年の長期予測では増加ペースが減速しています。米国は100歳以上まで長生きする人の割合が日本よりも低いからでしょう。

対人口比で見ると、インド、中国、バングラデシュ、ブラジルなどの新興国は日本と比べると低い値で推移しています。フランスやイタリアなどの先進国が高い傾向があります。米国は、先進国でありながら移民大国であるために、対人口比が低くなっているものと考えられます。

このように日本は、絶対数でも、対人口でも、長期予測で見ても、世界的に100歳以上人口が多い「超長寿社会」トップランナーであることが分かります。

これを見て、「長寿社会でおめでたい」という解釈で終わるのか、「高齢社会で大変だ」と悲観的になるのか、「長寿ビジネスの機会」が世界に広がっていると考えるのか。同じ数字でも世の中をどういう視点で見るかで、私たちの生き方も変わってきそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)