業界ウォッチ 2018年11月5日

教員のちょっと気になる「世界都市総合力ランキング」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 世界都市総合力ランキング 」を取り上げてご紹介いたします。

先日(10月18日)森ビル系のシンクタンクである森記念財団都市戦略研究所が「世界の都市総合力ランキング2018」を発表しました。同ランキングによると、1位がロンドン、2位がニューヨークで、東京がそれに次ぐ3位(3年連続)となっています。

このランキングは、世界の主要44 都市の「総合力」を明らかにしたもので、経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスの6分野で複眼的に評価し、順位付けされています。日本の都市では、東京以外に大阪、福岡が評価対象となっています。

それでは、日本の都市は世界の中でどのくらいの位置づけなのでしょうか。どの国の、どの都市が、どの順位なのか、どの分野の評価が高くなっているのか実際の数字を見て確認してみたいと思います。

まず、総合力スコア(6分野の総合スコア)ランキングをみると、1位がロンドンで、2位ニューヨーク、3位東京、4位パリ、5位シンガポールの順となっています。大阪は28位、福岡が37位となっています。上位にランクされている都市は、先進国の都市が中心となっています。

44都市中、総合力が最も低い都市はカイロ(44位)で、次いでムンバイ(43位)、ヨハネスブルグ(42位)と主に新興国の都市が並んでいます。

続いて、6分野別に1位の都市をみてみたいと思います。「経済」では1位がニューヨークとなっています。「R&D」でも1位がニューヨーク、「文化・交流」では1位がロンドン、「居住」ではベルリン、「環境」はストックホルム、「交通・アクセス」はパリとなっています。

44都市全体を俯瞰すると、総合スコアに占める割合が高い分野は「経済」、「居住」、「環境」であることが分かります。「居住」のスコアは、どの国も割合が高く出ており、スコア値も44ヵ国で大きな差がついていないことが分かります。一方、44ヵ国で差が大きい分野は、「経済」、「R&D」、「文化・交流」であることが分かります。

都市は、国・地域よりもより、経済状況や、技術などの先進性、生活実態などがリアルに把握できる単位だと考えられます。世界的に魅力のある都市が多いほど、その都市が所在する国の力が強いものと言えそうです。東京が世界的に上位にランクされる都市であることは分かりましたが、東京以外に、大阪、福岡のランクがどのくらい上位に食い込んでくるのかで、国の競争力の状況が把握できるのではないでしょうか。

時々、他にも都市ランキングが発表されていますので、世界の経済情勢を把握するためにも、こうしたランキングをチェックするのも良さそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)