大前研一メソッド 2018年11月9日

ユニー・ファミマとドンキは“相思相愛”なのか?



大前研一(BBT大学大学院 学長 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

流通大手のユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)が、ドンキホーテHDに資本参加し、ドンキ株の20.17%を2119億円で取得して筆頭株主になります。11月7日からドンキHDに対するTOB(株式公開買い付け)を実施します。

その一方、ユニー・ファミマHDは、子会社である総合スーパー「ユニー」の株式60%を来年1月に282億円でドンキに売却し、すでに40%を持っているドンキの完全子会社とします。

ユニー・ファミマグループとドンキは株式を持ち合いを今後も進めて、経営統合へと進展していくのでしょうか。大前研一学長に解説してもらいましょう。

ドンキの店舗の特徴「圧縮陳列」がユニーにも有効

ユニー・ファミマHDは約1万7000店のコンビニ「ファミリーマート」と約190店の「ユニー」を傘下に抱える。ドンキHDはディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを国内外で400店展開している。両社の全店の売上高は4兆7000億円。イオンやセブン&アイHDに次ぐ流通グループとなる。

この小売業の再編話、ちょっと複雑でわかりにくい。伊藤忠商事は今年、ユニー・ファミマHDへの出資比率を株式公開買い付け(TOB)で41.5%から50.1%に引き上げて子会社にした。今回のユニー株のドンキ売却は、低調だったスーパー事業を切り離して、コンビニ事業に集中することが狙いだ。

ユニー・ファミマHDとユニー、ファミリマート、ドンキの資本関係については文章だけではわかりにくいかもしれないので、図で確認してほしい。資本関係は以下のニュースリリースのp.12に図示化されている通りである。

※資料:ドンキホーテホールディングス リリース(最終アクセス:2018/11/09)
http://www.donki.com/updata/news//181011_4OcTH.pdf

ドンキとユニー・ファミマHDは2017年夏に資本・業務提携した。ユニーの既存店を改装した共同店舗で、ドンキの店舗の特徴である迷路のような独特の「圧縮陳列」という売り方にしたところ、売り上げがけっこう伸びたという。ドンキのノウハウがスーパーにも有効だとわかってきたのだ。

それは伊藤忠にとっても驚きだったのではないかと思う。伊藤忠としては、ドンキのアグレッシブな売り方や、衣料・雑貨や化粧品などの若者に受ける商品開発力も手に入れたいところだろう。

ドンキはユニーを完全子会社化し、弱点だった食料品分野を充実へ

一方、ドンキはユニーを完全子会社とすることで、弱点だった食料品分野を充実できる。ユニーを譲ってもらった見返りに、伊藤忠ファミマ・グループから資本を20%受け入れ、2000億円もドーンと資金が入った。

ただ伊藤忠はドンキへの支配力を強めたいところだが、おそらくドンキの方は、しばらくしたら「ファミマは勝手にやっていいですよ。ウチはユニーをもらったことでベリー・ハッピー」と言って、かったるい商社のやり方に見切りをつけるのではないか。

ドンキはユニー・ファミマHDから取締役を受け入れることになるが、とりあえず20%の株では拒否権も持つことはできないので、ドンキにとっては非常に便利なステッピング・ストーン(踏み台)になったと思う。

ドンキはユニー・ファミマHDの持分法適用関連会社となる予定だが、ユニー・ファミマHDがドンキに対する出資比率をさらに引き上げて、ユニー・ファミマHDの傘下に入る展開は考えにくい。

ドンキは、2019年2月から社名を「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」に変更する。「ドン・キホーテ」では猪突猛進的な響きがあるが、社名を少し大人びた名前にすることによって環太平洋地域での海外出店を独自に進める狙いだとみられる。

※資料:商号の変更のための定款の一部変更及び役員の異動に関するお知らせ(最終アクセス:2018/11/09)
http://www.donki.com/updata/news//181011_2_rbGNw.pdf

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学名誉教授。