業界ウォッチ 2018年11月19日

教員のちょっと気になる「世界主要国のEC取引額」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 世界主要国のEC取引額 」を取り上げてご紹介いたします。

先日ジェトロが公表した「ジェトロ世界貿易投資報告 2018年版」によると、2017年の国別EC取引額(市場規模)は、トップは中国で約49兆円(4489億ドル)とのことでした。2位は米国で約40兆円(3660億ドル)で、3位が日本の約8.7兆円(788憶ドル)でした。

日本のEC取引額が世界3位とはいえ、米中の上位2か国と大きく差が開いています。それでは、4位以下の他の国のEC取引額規模がどのくらいで、今後EC取引額が各国どのくらい増えるのでしょうか。また、ECの浸透度合い、経済規模の大きさとEC取引額の大きさの関係はどうなっているのでしょうか。具体的に数字を見て確認したいと思います。

まず、2017年のEC取引額主要上位国を見ると、上位1~3位は前述したとおりですが、4位が英国で738憶ドル、5位がドイツ(491億ドル)となっています。こうしてみると、米・中2強が3000億ドルを超え、取引額が突出して大きいことが分かります。

2020年までのEC取引額の推移(予測)を見ると、やはり中国がトップで、次いで米国となっており、3位の日本との差が、更に開いていることが分かります。

次に、GDPの大きさを見ると、2017年は1位米国(19.5兆ドル)、2位中国(12兆ドル)、3位日本(4.9兆ドル)、4位ドイツ(3.7兆ドル)、5位英国(2.63兆ドル)となっており、6位にインド(2.6兆ドル)、7位フランス(2.59兆ドル)と、インドがフランスを上回っています。これが2020年には、インドは英国を抜いて5位にランクインします。

次にECの浸透度合いを見るために、GDPに対するEC取引額の比率で確認してみます。こちらも2017年1位が中国(3.7%)となっており、次いで2位英国(2.8%)、3位米国(1.9%)、4位日本(1.6%)、5位フランス(1.58%)となっています。2020年でも1位から4位まで順位が同じですが、5位にインド(1.76%)が入り、6位トルコ(1.72%)、7位フランス(1.71%)と、インドやトルコがフランスを追い抜いています。

こうしてみると、EC取引額の規模は、概ねGDPの大きさに依存するものの、国によってEC浸透度は異なり、2020年には新興国(中国、インド、トルコ)のEC浸透度が高まっていることが分かります。

インターネットや携帯・スマホが先進国のものではなく、新興国の生活インフラとなったのと同様に、今後ECも新興国の生活インフラとして浸透していくだろうということが、これらの数字からも言えそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)