旬の数字 2018年11月21日

ドローンで初の荷物輸送 福島で約9km、16分の飛行



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 専任講師)


先日11月7日、福島県の南相馬市と浪江町の郵便局間、約9kmを荷物運送する実証実験が行われました。荷物は郵便局のチラシや書類、小学生が描いた絵、高校生が作ったお菓子など。今まで軽自動車で25分かかっていたのが、約16分で運ぶことができたようです。今後は書類等だけでなくゆうパック配送など実際のサービスでの活用を行い、日本郵便では将来は全国での実用化を目指すとしています。

ドローン輸送は、以前から実用化が期待されていました。運送業の人員不足対策になること、車で運ぶよりコストが下がることやCO2削減などのメリットが多いからです。

ただ、期待が大きいものの、ドローン操縦者が目視できない範囲までの飛行は認められないという規制があり実現がされていませんでした。しかし、今年9月の航空法の改定により、一定の条件が満たされ国土交通省の許可がおりた場合は可能となったことで、今回の実証実験が実現し、運輸への活用第一歩が踏み出されました。(※1、2)

しかし、まだ課題も残っています。
まずは飛行時間です。ドローンの大きさによりますが、バッテリー容量により平均飛行時間は20~30分が中心となっています。荷物を届けて戻ってくることを考えると、今後はバッテリー性能の向上が必要です。
また、積載重量も今後の開発テーマとなります。今回の実験では約2㎏の荷物の輸送でしたが、今後はより重たいものの輸送に期待が寄せられるでしょう。

ドローン市場ではこの航行時間、積載重量の対応などが開発競争になっています。航行時間が1時間以上、積載重量は200㎏や500㎏などが実現されています。そのために、駆動部もモーターだけでなく、エンジンなどを積んだハイブリット型やジェットエンジン搭載などのドローンも研究が進んでいるようです。

今後、ドローン輸送で、コスト削減、人員不足の解消、CO2の削減などの課題が解決されることを期待したいですね。

出所:
(※1)国土交通省 ※最終アクセス 2019年3月19日
http://www.mlit.go.jp/common/001258569.pdf

(※2)国土交通省 ※最終アクセス 2019年3月19日
http://www.mlit.go.jp/common/001254115.pdf


執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)