業界ウォッチ 2018年12月24日

教員のちょっと気になる「国内玩具市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 国内玩具市場 」を取り上げてご紹介いたします。

毎年12月はクリスマスシーズンということで、子どもたちへのプレゼント用などおもちゃ・玩具の商戦が熱を帯びてきます。そんな中、先日帝国データバンクが、2017年の玩具業界の経営実態調査結果を公表しました。同調査によると、2017年の玩具業界売上高は4兆2,008億円と、前年度比23.9%の増加とのことでした。

玩具市場は、子ども向けだけではなく大人向けのハイテク玩具もあるとはいえ、少子化の影響を受けやすそうな市場だと考えることが出来るのではないでしょうか。しかし、前年度比で高成長していることころを見ると、その背景が気になるところです。前述の調査では、任天堂のNintendo Switchのヒットが大きな要因という指摘がされています。

それでは実際にNintendo Switchの影響がどのくらいあるのか、玩具業界の市場規模、任天堂の業績推移など実際の数字で確認してみたいと思います。

まず玩具関連企業の売上高合計の推移を見ると、2012年が約3.28兆円でそこから2016年まで微増でしたが、2017年に一気に4兆円を超え4.2兆円となっています。業態別にみると小売りは5000億円前後でほぼ横ばいとなっています。卸は微増となっており、製造が2014~16年で約5000億円規模で横ばいだったものが、2017年に約1.1兆円と2倍以上に伸びています。

帝国データバンクの「玩具関連企業」には、任天堂やソニーなどのTVゲーム会社が含まれています。一方、情報源が異なりますが、一般社団法人日本玩具業界はTVゲームを除く玩具市場規模を出しています。このデータを見ると、2007年~14年まで緩やかに増加トレンドでしたが、2014~17年は横ばい(微減)トレンドとなっています。このことから、玩具関連市場においてはTVゲームの押し上げ効果が大きいことが分かります。

それでは任天堂自身の売上がどうなっているのか確認してみたいと思います。任天堂の売上高の推移(2007~17年)を見ると、2006年11月発売のWii効果もあり2008年にいったんピークの約1.8兆円となっています。そこから2011年の6,476億円まで大きく落ち込み、以降2016年(約4890憶円)まで緩やかに売上高が減少しています。これらは、ほぼスマホの普及と、スマホゲームユーザー増加の影響が大きいものと考えられます。

しかし、2017年には約1兆円へと大台に回復しています。これはやはり2017年3月発売のNintendo Switchの効果が大きかったためだと言えそうです。

このように、玩具市場の伸びは、TVゲームでヒット商品が出るかどうかに依存しており、TVゲームを除くと横ばいから微減トレンドに入っていると言えそうです。ちなみに、TVゲームを除いた玩具市場で伸びている分野は「知育・教育」で、2007年は約916億円でしたが、2017年には1,693億円に拡大しています。

もしかするとTVゲームで知育・教育要素を持たせると、安定的に成長するビジネスになるかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)