旬の数字 2018年12月26日

PayPay「100億円あげちゃうキャンペーン」わずか10日間で終了



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 専任講師)

PayPayが12月4日より開始した「100億円あげちゃうキャンペーン」が、12月13日で終了しました。元々キャッシュバック額が100億円に達するか2019年3月までという告知でしたが、わずか10日間で終わってしまい、SNS等ではがっかりする消費者の投稿が相次ぎました。利用可能店舗に家電量販店が含まれていたことやボーナス支給期ということで、高額商品が購入されたことも財源の100億円が一気になくなってしまった理由と思われます。

PayPayは、ソフトバンクとヤフーの合弁会社として2018年6月15日設立、10月5日よりサービスを開始していました。サービス開始当初は知名度が高いサービスとはいえなかったようですが、「100億円上げちゃうキャンペーン」により一気に利用者を増やしました。

QR決済を含め、国内キャッシュレス決済が百花繚乱の状態の中で、後発ながら力技で攻めてきたソフトバンク/ヤフー陣営のやり方は、かつてのヤフーBBのADSLモデム無料でブロードバンドを普及させたやり方を思い起こさせるとの指摘もあります。

多くの企業が、様子を見ながら小規模~中規模でテストを重ねながら広めようとして乱立しているところに、一気に大量のリソースを投入して市場シェアを取りに行く戦略。まさに「孫氏(孫子)の兵法」といったところでしょうか。

こうした乱立した状態では、大胆な手を打つ企業が1社あると一気に普及する場合がありますが、今回のQR決済はどうなのか、気になるところですね。

ただ、今回のキャンペーンで、加入店舗や利用者が増加しましたが、電子決済には、楽天ペイ、LINE Pay、Origami Pay、そしてNTTドコモの「d払い」、さらにはSuicaやnanacoなどのFeliCaカードなど競合が多く存在しています。特に、競合の「LINE Pay」がPayPayのキャンペーン終了後、同様のポイント還元キャンペーン「Payトク」を12月14日にスタートしていています(12月31日まで)。

力技で勝負した後、今後のPayPay利用者拡大施策にどう舵取りするかが大事になってきそうです。PayPayを含めた、キャッシュレス決済の普及には期待したいですね。


出所:
PayPay株式会社 ※最終アクセス 2019年3月19日
https://paypay.ne.jp/promo/10billion-campaign/


執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)