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大前研一メソッド 2019/01/18

2030年の世界の都市別GDPランキング~日本は平成の延長で低迷?



大前研一(BBT大学大学院 学長 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

公益社団法人日本経済研究センターは、2018年12月、今後約10年間のアジア経済を俯瞰した「第4回アジア経済中期予測」を発表しました。日本及び米国を含むアジア地域(13カ国・地域)の主要77都市を対象に2030年までの人口、域内総生産(GDP)、1人当たりGDPを予測しました。

日本経済研究センターは「デジタル産業の強さが都市の経済力の伸長を左右している」と分析していますが、「デジタル産業の強さが左右」というのは表面的に見えている産業構造に過ぎず、メガシティの分析の根本的な掘り下げが足りません。

この予測結果をどう見ればよいのか、大前研一学長に聞きました。

2030年中国勢が躍進。メガシティの強さが国力の強さを決める

以下の予測調査によると、2015年時点の上位は、ニューヨーク、東京、ロサンゼルス、大阪、シカゴ、ヒューストンの順で、10位以内に米国8都市、日本2都市が入って中国はゼロだったが、2030年の予測では10位以内に北京、上海、深圳、重慶と中国の4都市が入っている。中国は中央集権的に見えて、経済的には各省や各市が米国の各州や各市以上に実は自立している。

※出展:アジア経済中期予測 第4回 2018-2030年(最終アクセス:2019/01/18)
https://www.jcer.or.jp/economic-forecast/2018125-4.html

この結果として、米国は5都市に減り、日本も東京だけになった。大阪は11位、福岡も53位に下落している。アジアの他の都市では、ジャカルタが27位、マニラが31位、バンコクが36位、クアラルンプールが40位に上昇している。

また、都市別の1人当たりGDPランキングでは、2015年時点も30年予測も、ITのスタートアップ企業が多いサンフランシスコ都市圏が1位。アジアでは都市国家のシンガポール、香港の順だった。

いま世界では、国の競争だけでなく、メガシティの競争が起きている。メガシティに繁栄が集まる傾向があるのだ。このことは、「THE END OF THE NAT-ION STATE(FREE PRESS社)」(邦題『地域国家論』講談社)という著書にも詳しく書いた。

また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院で教えている公共政策論も、「メガシティの繁栄」をテーマにしている。

メガシティは繁栄のため、中央集権から経済的に自立しなければならない

日本の場合、権限が東京に集中しすぎている。大阪や名古屋は人口規模ではメガシティだが、「世界中から人がやってくる」「企業もくる」「お金がくる」「情報がくる」というメガシティ繁栄の条件には欠けている。

大阪も万博だとかIR(カジノを含む統合型リゾート)だとかいってイベントを呼び込もうとしているが、経済的にはけし粒ぐらいの影響力しかない。札幌、仙台、福岡などがメガシティを目指そうとしても、みんなで足を引っ張って潰そうとしている。

メガシティ繁栄のためには、地方自治について規定する憲法8章の92~95条を書き換え、中央集権から経済的に自立した道州制への移行が必要だ。

憲法第8章の定めでは、地方は単に国から業務を委託された出先機関で「地方公共団体」という呼称で呼ばれている。地方の役所は国からの交付金によって運営されている。そのため、地方が独自に産業を誘致することは難しい。

1つの州が国家のように三権を持ち、独自に産業政策も行えるようになれば、メガシティも生まれる。

地方が国家のように三権を持つ単位として道州制を導入することが、メガリージョンの競合に打ち勝って繁栄していく必須条件だ。地方に真の自治権を与えるようにしなければ地方創生などは絵に描いた餅だ。狙いは世界中から人・カネ・モノ・情報が毎日くるようにすることだ。そういった日本の地方の自由度が繁栄の条件である。

失われた平成の30年を乗り越えて新元号とともに道州制への移行を果たし、新しい成長軌道に乗る。これを強烈な意志を持ってやらなくては、次の時代にも平成と同じく世界の中で日本の存在感は薄れていくだけだろう。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学名誉教授。