業界ウォッチ 2019年2月25日

教員のちょっと気になる「出版市場規模」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 出版市場規模 」を取り上げてご紹介いたします。

先日、出版業界の調査研究機関である出版科学研究所が2018年(1~12月累計)の出版市場規模を発表しました。同調査結果によると、「紙+電子」出版で前年比3.2%減の1兆5,400億円で、そのうち「紙」の出版が前年比5.7%減でしたが、「電子」出版が前年比11.9%増と好調だったようです。

確かに、出版不況といわれて久しいですが、紙の出版物が落ち込み、電子出版が伸びるというのは、近年のライフスタイルからも確かにそうだろうなと思えます。

では、紙の出版物の落ち込みの規模感がどの程度で、書籍・雑誌でどのような違いがあり、電子出版の規模感がどの程度なのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。

まず出版物(紙+電子)の販売額(市場規模)の推移を長期で見てみます。電子出版の数字を確認できたのは2007年以降なので、それ以前は基本的に「紙の出版物」が出版市場規模となります。

1970年は1,446億円でしたが、以降右肩上がりで急成長し96年に2兆6564億円とピークを迎えますが、以降は右肩下がりとなっています。「紙の出版」だけで見ると、18年に1兆2921億円と、96年ピーク時の半分以下にまで落ち込んでいます。

一方、電子出版は07年に355億円でしたが、以降増加トレンドで18年には2479億円へと大きくのびています。ですが、出版全体(紙+電子)の落ち込みを補う水準にまでは至っていません。

次に、書籍・雑誌の違いを見てみます。書籍は、96年の1兆0931億円をピークに減少トレンドに入っています。月刊誌は、85年に書籍を上回り、97年の1兆1699億円をピークに減少トレンドとなり、11年に再び書籍を下回るようになりました。週刊誌は、95年408億円をピークに減少に転じています。電子書籍は、07年から一貫して増加トレンドで、15年以降、週刊誌を上回るようになりました。

ちなみに、電子出版は、電子のコミック・雑誌・書籍のカテゴリのうち電子コミックが大半を占めています。

こうしてみると、書籍、月刊誌、週刊誌は90年代半ばがピークで、落込みが止まらない状況が分かります。特に月刊誌の90年代までの伸びと、ピーク以降の落ち込みが激しいことが分かります。一方、最近サブスクリプション型コンテンツ消費が増加・定着しつつあるので、今後更に電子出版のウェイトが高まる可能性が高そうです。

大型書店に足を運ぶと、最近は書籍ではなく、文具・カバンなどの販売スペースが増えていることに気が付きます。紙の出版がこれだけ大きく落ち込んでいたら、そうせざるを得ないのだろうなと納得がいきますね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)