MBAダイジェスト 2019年4月1日

日本の国家戦略と税制(1)3つのキーワード、「税」「歴史」そして「戦略」

『MBAダイジェス』シリーズでは、国内初・最大級のオンラインMBAである「BBT大学院」、ならびに2つの国際認証を持つ「BOND-BBT MBAプログラム」の修了生が、両校で学ぶMBA科目のエッセンスをまとめ、わかりやすく紹介していきます。将来的にMBAの取得を検討している方や、MBAの基礎知識をインプットしたい方はご活用ください。



執筆:植田秀史(BBT大学院MBA本科修了、植田ひでちか税理士事務所 所長)
対象科目:日本の国家戦略と税制(大武健一郎 教授)

『税』を知ることは日本・世界を知ること

税は、多くの方にはなじみが薄く、特にサラリーマンにとっては年末調整で納税が完結してしまうため、あまり関心がないのではないでしょうか。しかし、税は多くの国民の生活に密着し、とても大きな影響力を持っています。時には消費税の増税前の駆け込み需要のように、税が人々の生活や行動を変えてしまうこともあります。

また、ごく最近まで、税は国が自由に決めてよいものでした。しかし、現代は経済のグローバル化が進み、税制も一国の事情だけでは決められなくなっています。今話題の法人税率の引き下げ議論は、海外から企業を誘致するための国際的な「税率引き下げ競争」が背景にあるのです。

このように、税というキーワードを通じて、それが社会にどのように影響しているのか、世界の中でどのような意味合いを持つのかを知ることで、今の日本そして世界について、多くを学び、理解を深めることができるのです。

『歴史』を知って世界を動的に理解する

そして、もう一つのキーワードが「歴史」です。今の社会の姿を本当の意味で理解するためには、なぜそうなっているのか、という歴史的背景に対する理解が欠かせません。例えば、高度経済成長期には、日本には「有利な為替レート」「人口の増加」「人の大移動」という3つのボーナスがありました。

しかし、このボーナスは現在、逆ボーナスとなって我が国を苦しめています。そして、このことは「未来の歴史」を考える上でも重要です。我が国の人口は1億2710万人(2014年)から約50年後には8700万人程度に減少すると予想されています。我々はこのような事実を前提として、未来を考えていくことが必要です。

このように、過去、そして未来の姿を踏まえながら今の世界を「動的に」理解することで、初めて次のキーワードである『戦略』が見えてきます。

『戦略』を考え、未来に向かって進む

『税』で今の日本と世界を学び、過去と未来の『歴史』の姿を踏まえ、我が国日本がどのような方向に進むべきか、その『戦略』を考えます。同時に、私たちは自分自身の未来への戦略も考えることになります。そして、その戦略を実行するため、まさに今日から何ができるのかを考え、議論します。

このように、「日本の国家戦略と税制」は、国家戦略のキードライバーともいうべき税というフィルターを通して、日本そして世界について理解を深め、我が国のあるべき姿に想像を巡らせるとともに、自分自身についても具体的な未来への指針となる『戦略』を手に入れる講義なのです。

すべての日本人にとって必要な、長期的視点に立った『戦略』を、一緒に考えましょう。

次回からは、より具体的な講義の内容をご紹介します。

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植田秀史

BBT大学院MBA本科 修了生
植田ひでちか税理士事務所 所長
国税局を経て、独立。BBT大学院大学院修了後、本科目のTA(Teaching Assistant)を務める。


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大武 健一郎(BBT大学大学院 教授、元国税庁官)

1946年生まれ、東京都出身。東京大学卒。70年旧大蔵省入省。大阪国税局長や財務省主税局長を歴任、2005年国税庁長官で退官。商工中金副理事長を経て、 2008年4月より「ベトナム簿記普及推進協議会」を立ち上げ、理事長としてベトナムで日本語と複式簿記の普及に努める。2008年7月より2012年7月まで大塚ホールディングス株式会社代表取締役副会長も務めた。
35年間勤務のうち20年間を税に携わる。税制の企画立案と税務行政の両方を担当したという点で、他には例をみない税の専門家。
日米租税条約を32年ぶりに全面改正したアメリカとのタフなネゴはあまりにも有名。これにより配当や利子、特許の使用料が原則として相互に免税となり、知的財産の開発に拍車がかかるだけでなく、研究開発に対して恒久減税を実施したこととあわせ、欧米の対日投資がふえる効果があった 。また、この条約が、その後の先進国との租税条約のモデル条約となった。なお、税理士法についても21年ぶりの改正を担当した。


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