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MBAダイジェスト 2019/04/04

日本の国家戦略と税制(4)「あなた」が超高齢化社会を生きるヒント



執筆:植田秀史(BBT大学院MBA本科修了、税理士)
対象科目:日本の国家戦略と税制(大武健一郎 教授)

我が国は、他国が経験したことのない超高齢化社会に、まっしぐらに向かっています。それはどんな社会なのでしょうか。そして、それにどう対処すればよいのでしょうか。

本質的問題は「長寿化」

我が国は、多くの問題を抱えています。国債発行額に借入金等を加えた「国の借金」は1000兆円を超え、なおも増加しています。国の予算である一般会計の総額は約100兆円で、このうち約4割を借金で賄っている計算です。国の予算の30%強は年金や医療費などの社会保障費に、25%程は国債の償還や利払いに使われており、これらを減らすことは構造的に難しいと考えられています。

このような問題を議論するとき、よく「少子高齢化」が原因だと言われます。確かに高齢化によって高齢者が増え、それを支える若い世代は少子化によって減っています。しかし、本当の問題は、「長寿化」にあるのです。

日本は、戦後の50年で平均寿命が30年も伸びました。このような国は世界に例がありません。一方、現在の年金制度などの社会保障制度は、ほとんどが高度経済成長の終わり頃である1970年代に設計されました。この頃は高齢者が少なく、それを支える生産人口が急激に増えていった時代です。

しかし、これまで経済成長を支え、人口構成に大きな割合を占める団塊世代の方々は既に高齢者世代に突入し、今度は支えられる側に回っています。例を見ない長寿化が、大きな社会負担となってのしかかってきているわけです。

来るべき高齢者社会

この傾向は、ますます加速していきます。現在のところ、出生数は減少しているものの、長寿化によって死亡数も伸びていかないことから、総体としての人口はあまり変わってません。

しかし、2025年頃から本格的な人口減少が始まります。2050年には1億人を割り込み、9700万人になると考えられています。この頃にはさらに高齢化が進み、人口の40%が65歳以上、25%が75歳以上になります。我々は、この想像を絶する高齢化に備えて行かなければならないのです。

2050年の高齢者は、資産を持たない人が多くなると考えられます。現在の高齢者である団塊世代以上の方々はバブル景気や預金金利が8%もある時代を経験しています。また、土地などの資産が値上がりしていく時代でもありました。その結果、多くの資産を持っているのです。

しかし、これから高齢者になる団塊ジュニアの世代(現在40歳から50歳位まで)は、バブル崩壊後に社会人になり、ゼロ金利・資産下落の時代を20年過ごして来ています。一部の成功者以外、高齢になっても資産を持っている人は少ないでしょう。この世代が高齢化したときの景色は、現在とは全く様子が異なるのです。

どう備えるか?

今は現役世代でも、2050年には75歳以上の高齢者です。どうすれば悲劇的な高齢期を避けられるか。講義では幾つかの方法を提示していますが、ここでは一つだけご紹介します。

それは、「元気なうちは働く」という意識を持つことです。

定年は65歳へ延長され、年金の受給資格は更に遠くなる可能性があります。年齢がいわゆる高齢になったからと言って、あとは国に面倒を見てもらおうと考えていると、痛い目を見ることになるでしょう。

ならば元気なうちは現役を続ける、死ぬまで現役で有り続けることを、今から考えてはどうでしょうか。そして働き続けることは、必ずしも雇用されることだけをいうわけではありません。それまでの経験を活かして新たな事業を立ち上げたり、社会問題を解決するNPOで働くこともあり得るでしょう。

幸いなことに、2050年は35年後。時間はまだあります。高齢になってもエネルギッシュに人生を満喫できるよう、今から学び、実践していくチャンスをしっかり掴みましょう!

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植田秀史

BBT大学院MBA本科 修了生
植田ひでちか税理士事務所 所長
国税局を経て、独立。BBT大学院大学院修了後、本科目のTA(Teaching Assistant)を務める。


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大武 健一郎(BBT大学大学院 教授、元国税庁官)

1946年生まれ、東京都出身。東京大学卒。70年旧大蔵省入省。大阪国税局長や財務省主税局長を歴任、2005年国税庁長官で退官。商工中金副理事長を経て、 2008年4月より「ベトナム簿記普及推進協議会」を立ち上げ、理事長としてベトナムで日本語と複式簿記の普及に努める。2008年7月より2012年7月まで大塚ホールディングス株式会社代表取締役副会長も務めた。
35年間勤務のうち20年間を税に携わる。税制の企画立案と税務行政の両方を担当したという点で、他には例をみない税の専門家。
日米租税条約を32年ぶりに全面改正したアメリカとのタフなネゴはあまりにも有名。これにより配当や利子、特許の使用料が原則として相互に免税となり、知的財産の開発に拍車がかかるだけでなく、研究開発に対して恒久減税を実施したこととあわせ、欧米の対日投資がふえる効果があった 。また、この条約が、その後の先進国との租税条約のモデル条約となった。なお、税理士法についても21年ぶりの改正を担当した。


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