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MBAダイジェスト 2019/04/06

日本の国家戦略と税制(6)「平和のプロ」日本と「戦争のプロ」ベトナムの「未来」

『MBAダイジェス』シリーズでは、国内初・最大級のオンラインMBAである「BBT大学院」、ならびに2つの国際認証を持つ「BOND-BBT MBAプログラム」の修了生が、両校で学ぶMBA科目のエッセンスをまとめ、わかりやすく紹介していきます。将来的にMBAの取得を検討している方や、MBAの基礎知識をインプットしたい方はご活用ください。



執筆:植田秀史(BBT大学院MBA本科修了、税理士)
対象科目:日本の国家戦略と税制(大武健一郎 教授)

第5回は、大武教授が最近書かれた『「平和のプロ」日本は「戦争のプロ」ベトナムに学べ』から、「平和のプロ」である日本と「戦争のプロ」であるベトナムの歴史に対する認識の違いをご紹介しました。

つまり、戦争のプロであるベトナムは、「歴史は勝者が作る」ということを強く認識しています。だから大きな犠牲を払っても勝利にこだわり、勝利することで自分たちの国や歴史を守ってきたという話でした。

平和のプロ日本の強み

一方で、「平和のプロ」である日本には、ベトナムには無い強みがあります。

その一番の強みは、「人を信用する」ということです。

世界的にみて、日本人ほど他人を信用する国民はいないと考えられています。これを「騙されやすい」と考える向きも無くはありませんが、むしろ、70年以上に渡って戦争を経験することなく、経済発展させてきた日本は、自然と他人を信用し、一致団結して協力しあうことができる思想や風土を自然に持っていると考えるべきです。

これは「戦争のプロ」ベトナムと比較すると、とても大きな違いです。幾度となく戦争に巻き込まれたベトナムは、極限の状況で自分が生き残るために、他人を信用したり心配したりということをしません。信用できるのは自分と家族だけ。そのため、誰かと一致協力して何かをなし遂げるということが難しいそうです。ベトナムには「1対1なら日本人にも負けないが、4対4なら絶対に勝てない」ということわざがあるくらい、チームプレーが苦手とされています。

また、平和が前提の日本では、10年先、20年先のライフプランを、ごく自然に考えることができます。しかし、ベトナムの方に将来のことを聞くと3年くらい先までが限界で、それ以上のことが考えられないそうです。これは個人だけでなく、政府の政策においても同じで、中長期的なプランが欠けているといいます。正に平和のインフラがない、戦争のプロ故の課題です

このように、日本とベトナムは対極的な特徴を持っており、お互いに無いものを持ち合っているということができるでしょう。

日本とベトナムはどう協力できるか

では、未来を見据えて、日本とベトナムはどのように協力していけるのでしょうか。

ひとつは人材です。高齢化と少子化によって、今後日本の生産人口は急激に減少すると考えられています。特に土木作業員や左官、トビなど建設業や、介護などの医療分野、消防や自衛隊(国防)まで、体力のいる仕事を担ってくれる人が、これからどんどん減っていきます。

この問題を解決するためには、移民の受け入れが考えられます。しかし、闇雲に移民を受け入れていたのでは、治安の悪化など多くの問題を引き起こす可能性があります。

方法のひとつは、ある程度の技術やスキルを持った人を移民として受け入れるという政策です。特に、日本語が話せるかどうか、ということを基準に置く必要があります。

この点について、ベトナムでは日本語を学ぶ人が多く、ハノイ貿易大学にはビジネス日本語学科があります。日本語は英語、フランス語と並んで人気が高く、特に、日本語を学び、有名大学を出た人は、引く手あまたの状態です。

また、現在、ベトナムで建築・土木作業を教える専門学校の設立が進められていると聞きます。このような学校を出て、土木建築作業の技術を持ち、かつ日本語もできる人は、極めて貴重な存在と言えるでしょう。このようなベトナムの人に日本に来てもらい、活躍してもらうことは、日本にとってもベトナムにとってもメリットがある、Win-Winの方法と言えます。

ベトナムの人口構成は、きれいなピラミッド型をしています。若いベトナム人は、日本で働いてもいいという人も多いでしょう。日本とベトナムが交流を深めることで、お互いにないものを補い合い、未来に向けて相互に発展していく関係を作り出すことは、大変有用なことだと考えられます。

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植田秀史

BBT大学院MBA本科 修了生
植田ひでちか税理士事務所 所長
国税局を経て、独立。BBT大学院大学院修了後、本科目のTA(Teaching Assistant)を務める。


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大武 健一郎(BBT大学大学院 教授、元国税庁官)

1946年生まれ、東京都出身。東京大学卒。70年旧大蔵省入省。大阪国税局長や財務省主税局長を歴任、2005年国税庁長官で退官。商工中金副理事長を経て、 2008年4月より「ベトナム簿記普及推進協議会」を立ち上げ、理事長としてベトナムで日本語と複式簿記の普及に努める。2008年7月より2012年7月まで大塚ホールディングス株式会社代表取締役副会長も務めた。
35年間勤務のうち20年間を税に携わる。税制の企画立案と税務行政の両方を担当したという点で、他には例をみない税の専門家。
日米租税条約を32年ぶりに全面改正したアメリカとのタフなネゴはあまりにも有名。これにより配当や利子、特許の使用料が原則として相互に免税となり、知的財産の開発に拍車がかかるだけでなく、研究開発に対して恒久減税を実施したこととあわせ、欧米の対日投資がふえる効果があった 。また、この条約が、その後の先進国との租税条約のモデル条約となった。なお、税理士法についても21年ぶりの改正を担当した。


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