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BBTインサイト 2019/04/06

大前研一流 問題解決手法とは?(6)PSAを理解する「問題解決の実践」



大前研一(BBT大学大学院 学長)
編集・構成:mbaSwitch事務局 / BBT大学オープンカレッジ

あなたを、ある食品メーカーのセールスパーソンに見立てて下さい。そして、自分の担当地域のスーパーマーケットにおける商品の売れ行きが他地域よりも悪いとします。さあ、どうしますか?

第1のステップは、どこに問題があるのかを見つけること、すなわち問題を局在化(ローカライズ)させることになります。前提は、カップラーメンの全国ベースの売り上げ個数に占める自社商品のシェアになります。

自社商品の全国シェアが 10%だとすると、通常は、担当地域のスーパーでカップラーメンが1日に 10 個売れたなら、そのうち1個は自社製品であるはずです。まずは、この数字が基礎になります。

このケースの場合、問題を局在化させるためには、調査しなければならないポイントが5つあります。1つ目はカバレージ・オブ・マーケット(COM)です。商品が、担当地域のどのくらいの数のスーパーに置いてあるのかということです。カバレージが足りなければ、商品が売れない理由は、商品がお客の目に十分触れていないからだ、と考えること
もできます。

一方、カバレージが 100%、どの店にも置いてあったとする場合は、2つ目のポイント、インストアシェア(ISS=店全体の売り上げに占める自社製品の比率)を考えなければなりません。お客の9割は、店内に入ってから購入商品を決めるという性質があります。ですから、もしもISS の数値が低かった場合は、いかにお客にアピールするか、つまりディスプレイが重要になってきます。

すると次は、3つ目のポイント、ディスプレイシェアを調べるのです。店内のカップラーメン売り場に自社商品が占められている割合です。例えばラーメンの陳列棚が全体で1m×横2m=2平方メートルだったとします。このうち 0.2 平方メートル=10%を自社商品が占めているかどうか、占めていれば全国ベースの売り上げシェアと同じと言うことで、何ら問題はないということになります。

4つ目のポイントは手持ち率です。手持ち率とは、商品がお客にピックアップされる割合のことです。10%のディスプレイシェアであるなら、手持ち率も 10%になってはじめて、全国シェアと同じになります。つまり、カップラーメン売り場に買いに来たお客が 10 回に1回、自社商品を手に取ってくれているかどうか、ということです。

最後のチェックポイントは購買率。お客が商品を手にとってレジまで持っていった確率です。お客は、商品を手に取ってはくれても、レジには持ってゆかず、棚に戻してしまうことがあります。ですから手持ち率と購買率の差が「手には取ったけど買わなかった人」の確率です。

このように、チェックポイントをいくつか上げて丹念に調べ、データは適正に出ているか、なぜ自分の担当地域のスーパーは全国平均のシェアに満たないのかということを正確に把握してゆくのです。そして、解決策が決まっていきます。

例えば COM が足りなかったとします。その場合、セールスパーソンの数を増やして営業活動を強化し、少しでも多くの店に自社商品を置いて貰うようにすることが、第の解決策になります。ただし、仮に COM が 50%だったとして、それを 90%にしようとするのなら、それには大変なコストがかかってしまいます。しかし日本の人口の 50%を占める FTONS(福岡、東京、大阪、名古屋、札幌)に限定して、100%の COM を目指し、FTONS 内で 20%のシェアを取れば、全国シェアは 10%までゆきます。その方がコストはかからずに目的は達成できる、そんな考えもできます。

カバーするエリアを 50%から 90%にする場合と、カバーした 50%のエリアで 20%のシェアを取る場合では、どちらが効率的で得なのか… PSA では、このように柔軟で論理的な考察をしなければなりません。

また、ディスプレイシェアを調べた結果、どの店でも業界トップの他社商品が、陳列棚の 80%以上を占めていて、自社商品は隅っこに追いやられていたとします。これは、CPG(コンシューマー・パッケージド・グッズ=消費者向けに包装してある商品)と呼ばれる商品にとっては致命傷です。なぜなら、CPG は基本的にディスプレイの量と売れる量が比例するからです。このケースの場合は各店に対して徹底的に営業をかけないといけないのです。

* * *

いかがだったでしょうか? PSA の概要を理解できたのではないでしょうか。この PSA という考え方はビジネスから日常生活まで、あらゆる場面で応用可能です。一人でも多くの「問題解決者」が生まれることを願って止みません。

この記事は2013年6月1日に発行された小冊子「大前流問題解決法 第10版」(BBT大学オープンカレッジ 問題解決力トレーニングプログラム)の内容を、当サイト用に転載したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学名誉教授。