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MBAダイジェスト 2019/04/08

日本の国家戦略と税制(8)日本の、あなたの、それぞれの国家戦略



執筆:植田秀史(BBT大学院MBA本科修了、税理士)
対象科目:日本の国家戦略と税制(大武健一郎 教授)

未来はどうなるのか

これまで7回に渡って、「日本の国家戦略と税制」のエッセンスをご紹介してきました。最終回の今回では、これまでの話を振り返り、自分はどうするか、ということを考えてみたいと思います。

まず、我が国は今後、これまで体験したことのない時代を体験するという話をしました。その理由は、人口動態にあります。日本の人口は既に減少に転じ、少子化・高齢化を原因とする生産人口の減少に、今後拍車がかかります。今のままでは日本経済は減速を余儀なくされるでしょう。現在のように高齢者がお金を持っている時代は過ぎ去り、お金のない高齢者が街にあふれる状態が懸念されます。

国際情勢は、現在よりもはるかに複雑さを増すでしょう。アメリカ、中国、ロシア、EUといった大国はそれぞれのプレゼンスを上げるために壮絶な綱引きをしています。アメリカ(自由主義国)とソ連(共産主義国)との対立といった、東西冷戦のような単純な二軸構造では語ることができない、極めて複雑なものとなっています。

繰り返しますが、これは戦後70年、我が国が一度も体験したことのない未知の世界です。しかし、海外からの移民を大量に入れるなどの劇的な施策を打たない限り、ほぼ正確に到来する未来の姿といえます。したがって、それに対する備えが必要になるでしょう。幸い、社会の変化は少しずつ進んで行くでしょう。備える時間は十分にあると言えます。

自分の国家戦略を考える

では何をすればいいのでしょうか。

日本国としては、高齢化しつつもこれまで培った多くのノウハウや平和のプロとしての技術、スキルや考え方を他国に提供し、その発展を手伝うことができるでしょう。特にアジアの国々は親日的な国が大変多く、我が国はアジアの精神的リーダーとしてそれらの国から尊敬を集めています。ベトナムを初めとして、これから大きく発展するアジアの国々を助け、相互に協力し助けあうこと、これがまず何より必要なことだと思います。

このように国際的な位置づけを確保しながら、大国の中でどのようにバランスを取り、平和を維持し続けるかが、我が国の未来を決める重要な要素となるでしょう。

自分自身の戦略を実行する

ではその中で、自分個人はどう考え、行動するべきでしょうか。

未来は不確定要素にあふれていますが、それでも見える未来に向けて、どう備えればよいのでしょうか。私は3つあると考えています。

ひとつは、高齢化した社会を自分自身も受け入れ、元気なうちは現役で働き続け社会に貢献し続けるということだと考えます。「65歳で定年」などとゴールを決めることは危険です。どのような形であれ、体が動くうちは社会に貢献できる人間になることを、今から準備しておくことはできそうです。これは、健康を維持する、といった基本的なことも含みます。

もうひとつは、常に新しい情報を取り入れ、それを自分の頭で考えて解釈し、それをアウトプットしていくことだと考えます。劇的に変化を続ける今の時代で、情報を取り入れないことはある種の自滅行為です。情報過多にも気をつけなければなりませんが、世界情勢に常に関心を持ち、健全で客観性を保ちながら世界に向き合うことは必要です。

BBT大学院の大前研一学長は、御年75歳を超えた今でも毎日数百通の世界中のニュースに目を通し、あらゆるメディアを通じて情報発信しています。我々も負けてはいられません。

最後のひとつは、戦略を持つことです。戦略と聞いて、それを他人事と考える人がいますが、それではいけないのです。情報を入手し、自分の頭で考え、計画し、実行する。この一連のプロセスを常に行い、自分を更新していくこと。間違いがあれば修正し、新しい計画を実行すること、これが最終的には自分を守り、家族を守ることになると考えます。

さて、ここでは、私の戦略をご紹介しました。しかし、これはひとつのアイデアに過ぎません。本講座では、これまでご紹介した内容をさらに深く、またご紹介できなかったテーマについてもさらに広く学び、多くを語り合い、それぞれの学生が自分の戦略に思いを馳せています。皆さんも、ご自分の「国家戦略」を考えてみてはいかがでしょうか。

植田秀史

BBT大学院MBA本科 修了生
植田ひでちか税理士事務所 所長
国税局を経て、独立。BBT大学院大学院修了後、本科目のTA(Teaching Assistant)を務める。


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大武 健一郎(BBT大学大学院 教授、元国税庁官)

1946年生まれ、東京都出身。東京大学卒。70年旧大蔵省入省。大阪国税局長や財務省主税局長を歴任、2005年国税庁長官で退官。商工中金副理事長を経て、 2008年4月より「ベトナム簿記普及推進協議会」を立ち上げ、理事長としてベトナムで日本語と複式簿記の普及に努める。2008年7月より2012年7月まで大塚ホールディングス株式会社代表取締役副会長も務めた。
35年間勤務のうち20年間を税に携わる。税制の企画立案と税務行政の両方を担当したという点で、他には例をみない税の専門家。
日米租税条約を32年ぶりに全面改正したアメリカとのタフなネゴはあまりにも有名。これにより配当や利子、特許の使用料が原則として相互に免税となり、知的財産の開発に拍車がかかるだけでなく、研究開発に対して恒久減税を実施したこととあわせ、欧米の対日投資がふえる効果があった 。また、この条約が、その後の先進国との租税条約のモデル条約となった。なお、税理士法についても21年ぶりの改正を担当した。


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