業界ウォッチ 2019年4月22日

教員のちょっと気になる「 コワーキングスペースの動向 」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 コワーキングスペースの動向 」を取り上げてご紹介いたします。

近年、日本でもシェアオフィスやコワーキングスペースが増えてきています。コワーキングスペースは、数年前のフリーランス・ノマドワーカーが中心に利用する形態から少しトレンドが変わってきているようです。特に米ウィーワークは国内でも拠点を拡大させており、従来のフリーランスやスタートアップ企業の他に、大企業の新規事業開発部門などが入居することが増えているようです。

それでは、実際に国内でコワーキングスペースがどのくらい増えているのでしょうか。また、世界的にはどのくらい伸びていて、コワーキングスペースの広さ・規模感に変化があるのでしょうか。実際に数字を見て確認をしたいと思います。

まず、国内の動向を見てみます。不動産サービス会社のJLLによると、東京都心5区のシェアオフィス(コワーキングスペース含む)貸床面積でみると、増加トレンドとなっておりますが、特に2017年、’18年と大きく伸びており、’19年もさらに拡大する見通しとなっています。Weworkの拠点拡大の影響が主な要因となっています。

世界の動向を見ると、コワーキングスペースのメンバー数(利用会員数)では、当初は米国が中心となっていましたが、17年以降、米国以外のメンバー数が大きく増えていることが分かります。

また、世界のコワーキングスペースの広さ別構成比を見ると、2014~‘18年にかけて、500㎡以下のコワーキングスペースの割合が減っており、1000㎡以上の割合が大きく伸びていることが分かります。ちなみに、この調査を行ったDeskmagの資料によると、複数拠点を運営するコワーキング事業者、収容人数が200人以上の大型のコワーキングも伸びています。また、収入源もデスク共有型の会費収入よりも、個室収入の割合が伸びているという数字が示されています。

このように見ると、コワーキングスペースが注目され出した2010年代前半は、フリーランスなどを中心としたノマドワーカー需要として、比較的小規模で始まったものですが、Weworkに代表されるように、大企業の部門ごと、スタートアップ企業丸ごと入居するなど、大型化する傾向が強くなっていることが分かります。さらに、米国だけでなく世界で広がっていくことが予想されています。

日本でも、働き方改革法案などの影響もあり、こうした傾向が拡大していくことが予想されます。働き方、企業形態、オフィスの在り方も、今後も更に変化していきそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)