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大前研一メソッド 2019/04/26

日本の労働生産性はなぜ低いままなのか?~日本の時間当たり労働生産性は米国の3分の2程度と低い~



大前研一(BBT大学大学院 学長 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

OECDのデータに基づく2017年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、47.5ドル(4733円/購買力平価(PPP)換算)と、米国(72.0ドル/7,169円)の3分の2程度の水準に相当し、順位はOECD加盟36カ国中20位でした。主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いています。

日本人としては「手を抜かずに頑張って働いているつもり」なのですが、労働生産性が低い原因はどこにあるのでしょうか。日本を代表する企業の1社である日立製作所を経て、1972年にマッキンゼー&カンパニー・インクに入社した大前研一学長に聞きます。

▼資料:労働生産性の国際比較(2018年版)日本生産性本部(最終アクセス:2019年6月4日)
https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/

間接業務を徹底的に見直せ

企業の成長を促すための働き方改革は、「プレミアムフライデー」ではなく、まずはホワイトカラーの間接業務を見直すことが必須である。仕事の仕方が昔から変わっていないことが、世界と比べて日本の生産性が低い最大の理由なのだ。

例えば、出張中の部下にかかってきた電話を上司である課長が取って、用件を承り、当人にメモを残すような職場が日本にはいまだに数多く存在する。間接業務の大半はデータ入力や伝票整理、請求書作成などの定型業務である。AIやICTを活用して全部自動化して、定型業務に費やしていた時間を営業や企画などの非定型業務に振り向ければ、生産性は飛躍的に向上する。

また、支店や営業所同士の仲の悪さが生産性を大きく低下させているケースもある。大手の旅行会社などは、営業所同士の競争が激しく、「情報共有が大事」などと言いながら、顧客情報を営業所内部だけで囲い込み、全社で利用することができない、などという事例に事欠かない。

「ポイント・キャスティング」が百貨店の外商に取って代わる

旅行商品などは、顧客の行動パターンを分析したうえで、好みに合致した商品を案内すると、ヒット率は俄然高くなる。

広域の「ブロード・キャスティング」から、限定した地域や特定の層に向けた「ナロー・キャスティング」さらに標的顧客を絞り込んだ「ポイント・キャスティング」に到達している。

シックスセンシズホテル リゾート スパでは、家族旅行に年間2500万円以上を使う全世界100万人の顧客リストを保有しているという。

アリババのモバイル決済プラットフォーム「アリペイ」を運営するアント・フィナンシャルなどは、顧客データからプロフイールを作成して「ポイント・キャスティングにフル活用している。

先回りして顧客に働きかける、いわゆるプロアクティブ・マーケティングで当たりまくっているのだ。従来の百貨店の外商と同じことを、データベースだけで行っている。

例えばアリババでは、以下のような「ポイント・キャスティング」が行われている。
「キャッシュを持っている富裕層」
「外車に興味がある」
――などの属性を重ねて、ダイレクト・マーケティングを実施したところ、イタリアの高級車「マセラティ」(価格:約3000万円)60台を60秒で実際に売りきっている。

業務効率を改善するシステムはいくらでもある。そうしたシステムやAIを使い、データを寄せなければ生産性は上がらないのだが、日本にはそうした努力を本気で行っている会社がほとんど存在しない。

21世紀に入って世界は大きく変わったが、仕事のやり方にしても、政府の経済政策にしても、うまく行き過ぎた20世紀の残債から抜け出すことができていない。そこに日本経済が活力を取り戻せていない根本原因がある。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学名誉教授。