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MBAダイジェスト 2019/05/06

アカウンティング(6)実践・カフェ経営者のアカウンティング

 
執筆:佐藤祐樹(BBT大学院MBA本科修了、三丸化学株式会社 取締役)
対象科目:アカウンティング(櫻庭周平 教授)

accounting

店舗を拡張したいがカネがない!

コーヒー好きが高じてカフェ経営で起業したS君。

今回は、アカウンティングどころかお小遣い帳さえつけたことがない彼が、どのように試行錯誤しながら小さな会社を経営しているか、S君目線で追体験してみましょう。

* * *

創業1年、やっと単月度黒字の月が目立ってきた小さなコーヒー店。

席数はカウンター4席、2人掛けの小さなテーブルが2席、合計8席だけの店舗。

損益分岐点は売上40万円。

平均客単価を800円として来店者500人がボーダーライン。

定休日は1日だけなので、月に25日間稼働しているとして、毎日20人来店して、やっと黒字。

それ以降は、1人の来客で75%の貢献(限界)利益なので、来店者1人あたり600円の利益となる。

ここは頑張りどころだ。

役員報酬10万円だけでは悲しいので、なんとか次の株主総会までには数万円アップさせたい。

それなのに、合計8席だけの小さな店なので、来店が集中する時間帯は満席で断るケースが増えてきた。このままでは貧乏なままだ。

幸い、店のバックヤードは結構広く、カウンターを拡張する余地がある。

8席の店を12席にできそうだ。

内装工事の見積りを取ったら、約100万円。

やっと黒字化してきたところで、まだおカネはない。

経営を学んだことのない起業家はどう会計と向き合っているのか?

経営はおカネじゃないけど、残念ながら世の中はおカネで動きます。

優秀な経営者やビジネスパーソンは、ビジネスの共通言語であるアカウンティングの知識が不可欠です。事業目的の達成のためには、数字が何を物語っているのかをきちんと理解する必要があります。

それさえできれば、やみくもに難しい数式を覚える必要はありません。

小学校の算数だけで充分に夢やロマンを追求できます。

第3回目で、以下の普遍的な経営の流れをお話ししました。

① 夢やロマンを事業計画に変える

② 事業計画を資本に変える

③ 資本を資産に変える

④ 資産を収益に変える

⑤ 収益から利益を出す

⑥ 利益を資本に変える(③に続く。以後、ぐるぐる回る)

S君はやっと“⑤”まではこぎつけましたが、利益を資本化し、それを現金化して100万円の内装工事を行うには至っていません。

さて、どうやっておカネを工面しましょう?

どうやって協力者を説得しましょう?

S君の説得内容とは?

1年で返済するので、100万円を融資してください、とS君は切り出しました。

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出資だと、まだ配当が出せる状態じゃないので、既存の出資者にとってメリットはない。でも、短期の融資であれば、1年後には返済されるし、返済する方も責任感を持って使える。

100万円を1年間で返済するなら、だいたい8万円/月。

今より月に8万円のキャッシュが生み出せれば約束を果たせる。

拡張工事によって現在より8万円以上の利益アップができると納得してもらえれば、融資を断る理由はないはずだ。

1万円売って貢献利益は7,500円。

10万円ちょっと、今より集客できればOKだという計算。

客単価を800円として125人ちょっとだから、25日で割ると、毎日5人、お客さんが増えればいい。最近は満席によってそれ以上の機会損失を実感しているので、見込み通りに売上が上がるはずだ。

実際には、内装工事の耐用年数を10年とし、年間10万円だけ償却するつもりだから、決算数字に有利にはたらく。

たくさん利益を出して、次の決算には配当できるように頑張る。

だから100万円、おれを信じて貸してくれ!

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アカウンティングは怖くない

あなたはこの説得が、会計的にレベルの高い内容じゃないと感じたことでしょう。

でもこれは、経営はおろか会計の「か」の字も勉強したことがなかった青年の説明です。

非常に納得できるロジックだし、なにより、自分の言葉で語っています。

会計知識は発展途上ですが、必死で学ぼうとしている姿勢が伝わります。

教科書どおりの難しい数式を使われるより、ずっと心に響きます。

ポケットの100万円がぽろっと旅に出てしまうというものです。

配当も楽しみになってきます。

S君のアカウンティングへの姿勢が、関係者全員をハッピーにした瞬間です。

…6回に分けてお送りしてきたアカウンティング解説、いかがでしたでしょうか?

これが「会計」の説明?と、戸惑われた方が多いかもしれません。

そんな方は、BBT大学院のアカウンティングの講義を受けてみてください。

数字だけではなく、会社法から人材マネジメントまで、幅広い内容に驚くと思います。

あなたがアカウンティングの力量を上げ、世の中の価値の総量を力強く増やし続けることを、心から願っています。

佐藤祐樹

BBT大学院MBA本科 修了 三丸化学株式会社 取締役事業部長
1974年生、宮城県仙台市出身。
大学でデザイン(専門はシルクスクリーン)を学んだ後、写真業界、出版社勤務を経て現企業に転職。営業・マーケティング部門で活躍中、2011年3月に出張先で被災。
その後2年間、企業勤めの傍らボランティアセンターの運営に携わる。
2013年にBBT大学院に入学、2015年MBA取得、同年取締役事業部長に就任。事業活動の責任者としてマーケティングから人事まで幅広く担当している。
また、2015年10月に友人とコーヒーの焙煎販売を行う株式会社リュミヌー珈琲を設立。
その他、コピーライターや事業計画作成支援、大学の補助教員などのフリーランス業務も行う。
「世の中の幸福の総量を力強く増やす仕事人」を目指す愛犬家。愛犬を連れてよく遊びにも行く。
趣味は手作りスモークチーズなどの燻製を作ること。

※BBT大学院MBAプログラムの受講体験談はこちら