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大前研一メソッド 2019/05/24

MaaSの覇者となるべく、孫正義氏が打つ布石~IPOしたウーバーの最大株主はソフトバンググループ~



大前研一(BBT大学大学院 学長 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

ドライバーと乗客をマッチングする配車(ライドシェア)サービス米最大手のウーバー・テクノロジーズ(以下、ウーバー)は2019年5月10日、米ニューヨーク証券取引所に新規株式公開(IPO)を果たしました。上場時の時価総額は697億ドル(約7.6兆円)と今年最大の上場となりました。

ウーバーの最大株主はソフトバンクグループ(SBG)です。SBGとウーバーや世界の主要なライドシェアサービス新興企業との関係について、大前研一学長に聞きました。

SBGが世界の主要な配車サービス新興企業に出資し、最大株主に

SBGはウーバーの16.3%の株式を保有する筆頭株主である。SBGは2018年、ウーバーの16.3%の株を77億ドル (約8400億円)で購入したので、上場時の時価総額697億ドル(約7.6兆円)で想定すると、113億ドル(1.2兆円)の持ち分となった。36億ドル(3900億円)もの含み益となる。トヨタ自動車もウーバーに5億ドルを出資している。

トヨタとSBGは、ウーバーが分社化する方針の自動運転技術の開発部門にも追加出資することを2019年4月に発表した。トヨタ系部品大手デンソーも含め、出資額は10億ドル(約1100億円)になる。自動運転車の開発や量産で協力し、次世代の移動サービスの提供を強化する。

ライドシェア事業というのは競合が激しく、ウーバーの売上高の伸び率も、2倍を超えていた1年前に比べて減速している。2019年3月にナスダック市場に上場したライバル会社のリフトの株価も値下がりが続いている。ウーバーも上場後、株価が落ちてくる可能性もある。自動運転技術部門にSBGなどの外部資本を取り込んだのは、株価対策もあるのだろう。

SBGは、ウーバーのほか、中国のディディやシンガポールのグラブなどライドシェアの会社に大きな投資をして最大株主になっている。ウーバー、ディディ、グラブ、オラの4社で世界のライドシェアの9割近い乗降客シェアを占めるとSBGでは主張している。取り扱い金額が10兆円を超える規模に増えている。

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《SBGが投資する世界のライドシェアサービス》

◎投資先 / 拠点 / 出資額など
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◎グラブ/シンガポール(東南アジア)/30億ドル
◎滴滴出行(ディディ)/中国/100億ドル
◎フォートレスインベストメント(リフト株を所有)/リフトの拠点は米国
 /2017年に33億ドルで買収
◎オラ/インド/25億ドル以上
◎99/ブラジル(南米)/1億ドル(その後、2018年に滴滴出行が買収)
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SBGが投資する新興企業のひとつ、インドのライドシェアサービス大手のオラとは、バービッシュ・アガーワルCEOと方針の違いもあり、「SBGの孫正義社長は葛藤している」と『Bloomberg Businessweek』誌2019年4月15日号は伝えている。

同誌によると、孫氏はウーバーとオラの合併を促したが、独立性を尊重するアガーワル氏は合併に懸念を強めている。オラへの出資比率を40%超に引き上げるためにSBGが追加出資しようとしたが、最終合意には至らなかった。アガーワル氏が、創業者としてオラをコントロールし続ける保証が得られないことを理由にSBGからの追加出資を突っぱねている。

ユニコーンの企業価値ランキングでライドシェア会社が上位

企業評価額が10億ドル以上の非上場ベンチャー企業を指すユニコーンの4月現在の企業価値ランキングは、2位がウーバー、3位が中国のディディとライドシェアの会社が上位を占めている(1位は動画作成アプリ「TikTok」を持つ中国の今日頭条グループ=運営はバイトダンス)。

孫氏はかつてアリババ集団の上場のときも最大株主として大もうけしたが、今度も1兆円規模の額が手に入る。ただ、借金も大きい。それも差し引くと、今後どうなるか、世界的にも注目されている。

孫氏としてはライドシェア事業を「AI(人工知能)を活用したプラットホーム」ととらえ、各国のライドシェアの会社を経営統合し、ノウハウを交換するなどして世界的に巨大な(自家用車以外の交通サービスを連携する)MaaSコンソーシアムを作り上げたいのだろう。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学名誉教授。