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大前研一メソッド 2019/05/31

トヨタとパナソニックが住宅事業を統合へ



大前研一(BBT大学大学院 学長 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

トヨタ自動車とパナソニックは2019年5月9日、「2020年に住宅関連事業を統合する」と発表しました。

▼資料:パナソニック株式会社とトヨタ自動車株式会社、街づくり事業に関する合弁会社の設立に合意(最終アクセス:2019年6月4日)
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/28037485.html

自動車業界と家電業界のトップ企業同士の住宅関連事業を統合するわけですが、統合しても「競争力が高まる要素が見当たらない」と大前研一学長は厳しい見方をします。

両社の住宅関連事業を統合して、売上高ランキングでやっと5位

2020年1月に共同出資会社「プライム・ライフ・テクノロジーズ」を立ち上げ、ここにトヨタホームやパナソニックホームズ、トヨタの完全子会社になったミサワホームといった両社の住宅関連の子会社を移管する。住宅3社に加え、パナソニックの子会社であるパナソニック建設エンジニアリングと松村組も、新会社に移管する。トヨタ自動車とパナソニックの出資比率は同じ割合になる見通しだ。三井物産も出資を検討している。

2017年度の売上高はトヨタホームが5529億円で住宅メーカー6位、パナソニックホームズが2442億円だが、統合後は旭化成ホームズを抜いて、住友林業に次ぐ5位に浮上する。新会社の戸建供給戸数も計1万7000戸と業界最大級になる。

住宅メーカーというのは、専業の会社が非常に強い。売り上げトップの大和ハウスや2位の積水ハウス、3位の飯田グループHDの住宅事業は売上高1兆円を超えている。(注:4位の住友林業は売上高の1/3強が木材建材事業)

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《住宅メーカー売上ランキング(2018年3月期)》

(順位)メーカー名 / 売上高
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(1)大和ハウス工業 / 3兆7959億円
(2)積水ハウス / 2兆1593億円
(3)飯田グループHD / 1兆3353億円
(4)住友林業 / 1兆2219億円
(5)旭化成ホームズ / 5883億円
(6)トヨタホーム / 5529億円
(7)積水化学工業 / 5067億円
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トヨタは1975年に住宅事業に参入し、2003年にトヨタホームを設立した。大いなる期待が持たれていたが、あまりうまくいかなかった。売り上げ6位という数字も、買収したミサワホーム(売上高:3885億円)が含まれたものだ。

一方、パナソニックも住宅事業はイマイチだった。そのイマイチ同士の2つがくっついて、どうなるのだろうか。競争力は高まるのだろうか。

具体性に欠けるキャッチフレーズ「スマートシティ」

日本全体では新設住宅着工戸数は2009年度に100万戸を割り込んで以来、直近10年間は70万戸~90万戸台で推移しており、100万戸台を回復していない。都市部ではマンションが増えている。

▼資料:建築・住宅関係統計データ ― 国土交通省(最終アクセス:)
http://www.mlit.go.jp/statistics/details/jutaku_list.html

住宅市場が縮む中、両社は培った技術を持ち寄り、快適で便利な「スマートシティ」づくりを目指すという。

スマートシティーはITや環境技術などの先端技術を用いて電力の有効利用を図り、省資源化を徹底した環境配慮型都市。世界各地で実証実験が始まっている。街全体がインターネットでつながって省電力で動き、自動運転カーが走っている街がイメージされる。

パナソニックの「IoT」家電や、トヨタの電気自動車の充電設備が住宅に生かされることになるのだろう。災害のときには、その充電設備から家に電気を供給することもできるわけだ。

パナソニックからトヨタへの提案で事業再編の話を始めたのは2018年暮れだという。経営トップが会って、「お互いの強みを生かすためには組んだほうがいい」という話になったのだろう。

しかし、トヨタホームとミサワホームが提携して15年以上になるが、思ったほどの成果はなかった。トヨタが住宅事業のノウハウをつかんだとは思えない。パナソニックも同様だ。その両社がくっついて、どんな答えが出てくるのかを真剣に考えないといけない。

トヨタの創業者である豊田喜一郎氏も、パナソニックの創業者である松下幸之助氏も、家づくりという事業に関して強い思いを持っていたといういきさつがあり、本業とは別に住宅事業を手掛け、今日に至っている。自動車と家電でそれぞれ日本を代表する両社でも、住宅事業に関しては、トップ企業の仲間入りを果たせていない。その原因を、両社とも真摯に突き止めるところからまずは始めなければならない。

新会社の発表では、住宅とクルマ、生活のサービスがどう組み合わさるのか、エネルギーはどうするのか、具体的な方向性がよくわからなかった。個別の住宅の会社をくっつけていきなり「スマートシティ」といった大げさで曖昧な言葉が出てくるのは、結局のところ、まだ戦略を十分に考えていないからなのではないだろうか。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学名誉教授。