業界ウォッチ 2019年6月3日

教員のちょっと気になる「トランクルーム市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「トランクルーム市場」を取り上げてご紹介いたします。

近年、トランクルームなどの収納サービスの人気が高まっています。

先日キュラーズが公開したトランクルーム市場の調査結果によると、2018年のトランクルーム市場規模は590億円と、10年前の2008年比で2.5倍に拡大したそうです。

特に、都市部などで増加しているようで、「広い部屋だと家賃が高くて済めないが、狭い部屋だと荷物が入りきれない」というニーズをとらえて、個人の利用が増えているようです。

それでは、こうしたトランクルームのニーズが、どのように伸びていて、今後どのくらい伸びる可能性があるのか、海外と比較して、日本国内市場はどのくらい成長することが想定できるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、国内トランクルーム市場の推移を見てみます。2008年に235億円だったトランクルーム市場は、一貫して増加トレンドで、2018年に590億円となり、2025年には1011億円へと2018年から更に2倍近くに拡大することが予想されています。屋内型・屋外型ともに増加していることも読み取れます。

ちなみに屋内型とは主に不動産事業者が手掛けるスペース提供サービスで、屋外型とは輸送用のコンテナを収納スペース専用に加工した、屋外にあるレンタル収納スペースが該当します。

次に、海外(米国)のトランクルーム市場と比較してみたいと思います。株式会社パルマのIR資料で、セルフ・ストレージ市場として日米比較をしていますので、これを参考にしてみます。同資料によると、米国のセルフ・ストレージ市場は約2兆円で、世帯普及率が約10%となっています。日本のセルフ・ストレージ市場は約700億円(矢野経済研究所調べ)で、世帯普及率が1%未満となっています。

日本の世帯普及率が、米国並みの10%にまで拡大すると、市場規模が10倍の約7000億円の潜在市場ということになります。日米の人口比(一人当たりのセルフ・ストレージ使用額)で比較した場合、米国並みにすると約20倍以上(約1.4兆円)の潜在市場を持つと推定できます。

このビジネスは、個人の物置をアウトソースしているとも考えられます。また、IT的に考えるとPCの端末にデータを保管するのではなく、クラウドにデータを保管するのと同様に、個人生活のリアルな所有物を、自宅保管ではなく、クラウド的に外部保管しているとも考えられます。

このように見ると、トランクルーム市場はまだまだ成長余地がある有望な市場であると考えることが出来そうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)