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大前研一メソッド 2019/06/04

ファーウェイは米国の制裁に耐えられるか?



大前研一(BBT大学大学院 学長 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

携帯電話の基地局は中国のファーウェイ(華為技術)とZTE(中興通訊)、フィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソンが世界市場の9割を占めています。2020年を目途に商用サービスが始まる、次世代移動通信システム「5G(第5世代)」でもこの4社が激しい開発競争を繰り広げています。

米国勢が5Gの開発競争から脱落したことから、米国政府はZTEとファーウェイを狙い撃ちにしています。

まず、イランなどに通信機器を違法に輸出していたとしてZTEを輸出制限の対象に指定する制裁措置を発動しました(後述するように、その後、ZTEが罰金の支払いや経営陣の刷新、米国の査察チームを受け入れ、制裁解除)。ZTEに続いて、米商務省はファーウェイに対する事実上の輸出規制を決めたことで、同社は海外企業から半導体などの基幹部品が輸入できなくなりました。

ファーウェイは米国の制裁に耐えることができるのか、BBT大学院・大前研一学長に聞きました。

ファーウェイは年間売上でZTEの約9倍、10兆円超の中国最大級のハイテク企業

ZTEの2019年第1四半期(1〜3月期)の売上高は19.3%減の222億元(約3700億円)だった。それに対して、ファーウェイは2019年第1四半期(1〜3月期)、前年同期比39%増の1797億元(約3兆円)の売上高を記録し、全世界で5900万台のスマートフォンを販売した。

ファーウェイの売上高は「BAT」と呼ばれる中国IT大手3社のバイドゥ(百度)、アリババ集団、テンセントの合計売上高よりも大きい。

しかし、非上場のため、その経営事態は不透明な部分が非常に多く、「中国政府に恭順を示さざるを得ない」と言われる。

ZTEは米国の監査チーム、経営者の刷新といった米国側の要求を全面的に受け入れ

中国では2017年に「いかなる組織および個人も、国家の情報活動に協力する義務を有する」(第7条)と定めた「国家情報法」が施行された。同法の下、中国企業も中国人も好むと好まざるとにかかわらず、政府の情報活動に協力せざるを得ない。

中国製の中国通信機器に密かに仕込まれているのではないかと疑われている「バックドア(外部からサーバーを操作できるようにする裏口)」を経由して米国の軍事技術情報が漏洩しやすくなり、中国軍による米空母、イージス艦、潜水艦への攻撃が容易になることを米海軍などは警戒している。

となれば、米国とその関係国は自国を防衛するために「ファーウェイ製品を排除するのはやむなし」ということになる。

ZTEが2018年、ファーウェイと同様の禁輸措置を課されて、あわや経営破綻するのではないかというところまで追い込まれた。ZTEは巨額の罰金や米国の監査チームの受け入れ、経営者の刷新といった米国側の要求を全面的に受け入れた。

ファーウェイCEOは、一歩も引かない強気の構えだが……

ファーウェイの任正非CEOは、日本のメディアの取材に応じ、「米政府と争いますか、それとも和解しますか」との問に対して、「ZTEのように米国の求めに応じて経営陣を刷新したり、監視を受け入れたりするようなことはしない。

ZTEは中国政府に助けを求めたが、ファーウェイは仲裁を求めず、手を貸してもらうことも考えていない」と回答している。

【資料】
「ZTEのようなことしない」 ファーウェイCEO一問一答 —— 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44993400Y9A510C1EA5000/

米国の制裁による業績への影響についての問に対しても、任CEOは「ファーウェイの成長速度が鈍化されるが、影響は部分的なものにとどまるだろう」という回答していることから、ファーウェイは持久戦に突入するのではないかという見方が出てきている。

一方、「劇的な結末」を迎える可能性をトランプ氏は示唆する。

トランプ氏は、米中首脳会談という政治ショーの効果が最大になる演出を考えている?

トランプ米大統領は5月23日、ファーウェイに関し、「貿易協定の一部に含むことは可能だ」と述べ、対中交渉の取引材料として制裁を緩和する可能性を示唆した。

マイク・ポンペオ米国務長官は、トランプ氏の発言に先立ち、ファーウェイの問題は「国家安全保障の部分」であり、貿易問題とは独立した問題であるという位置づけを維持する考えを示していた。

ポンペオ長官の発言を真っ向から否定するトランプ氏は何を意味するのだろうか。

2019年6月下旬に大阪で開かれる20か国・地域(G20)首脳会議での米中首脳会談での「交渉の大きな成果を期待して欲しい」とアピールする“TVショーの予告編”の発言であると受け取れる。

トランプ氏は2018年、ZTEに対する禁輸を中国政府の要請で解除しており、“TVショーのプロデューサー”としてのトランプ氏は、米中緊張状態が最高潮に達したところで、 劇的な結末を演出するところに主眼を置いている可能性があると見る。

それによって、トランプ氏は「世界を俺がコントロールしているのだ」という自身の力を見せつけることで、目的を果たしたと満足するのではないか。

※この記事は、『大前研一ライブ #970(2019年5月26日放送)』を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学名誉教授。