業界ウォッチ 2019年6月17日

教員のちょっと気になる「国内遊園地・テーマパーク市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

経済産業省が5月に発表した特定サービス産業動態統計調査速報によると、2018年度(2018年4月~19年3月)の遊園地・テーマパークの売上高が、前年度比5.3%増の7213億円となりました。これは9年度連続の上昇です。

東京ディズニーランド/東京ディズニーシーやUSJなどの人気テーマパークだけなら分かりますが、国内の遊園地・テーマパークの全体売上高が9年連続での上昇とは少し意外に思いました。

それでは、遊園地・テーマパークの売上高は、入場料と、飲食・物販などとどちらが大きく貢献しているのでしょうか。入場者数と、入場者一人当たりの支出額のどちらが売り上げ増に貢献しているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、遊園地・テーマパークの売上高の推移を長期推移で見てみます。全体の売上高は、2000年度から’02年度にかけて伸びた後、’11年度までしばらく、2200~2300億円前後で推移していましたが、’12年度から売上上昇ペースが上がり、9年連続の上昇となっています。売上高を「入場料金・施設利用料収入」と「食堂・売店売上高」に分けてみると、概ね半々割合で推移していますが、‘12年以降は「入場料金」の伸びが大きくなっています。

次に入場者数の推移を見ると、’00年度(5555万人)から’03年度(7442万人)へと大きく増加しましたが、以降は‘09年度(6659万人)まで減少トレンドとなります。’11年度まで横ばいで推移した後、’12年度から上昇トレンドとなります。しかし’15年度(8119万人)をピークとして横這いに転じています。

その次に、入場者の平均支出単価(遊園地・テーマパークの売上高を、入場者数で除した値)の推移を見てみます。平均支出額全体を見ると、’00~’02年度は多少変動がありましたが、’03年以降は一貫して上昇トレンドとなっています。’03年度の約5600円から、’18年度の約9000円へと、15年間で約3400円近く支出が増加していることが分かります。また「入場料」支出と「食堂・売店」支出単価の推移を見ると、どちらもほぼ同額で上昇トレンドとなっていますが、’14年度を境に、「入場料」の支出単価の上がり方が大きくなっていることが分かります。

こうしてみると、遊園地・テーマパークの売上高の伸び、特に最近の9年連続の伸びは、入場者数の増加というより、一人当たりの支出増加要因が大きいということが分かります。更に、その中でも「入場料」支出の伸びが高くなっていることが分かります。確かに、東京ディズニーリゾートなどの入場料金の値上げなどもあり、こうした「入場料」単価アップが売上増への貢献度が高いことが分かります。

モノ消費からコト消費といいわれますが、遊園地・テーマパークなどのコト消費には、消費者が喜んで支出しているということも、この数字から読み取れそうです。

低成長下の日本経済にあっても、体験型のコト消費には、まだ成長する余地や事業機会がありそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)