業界ウォッチ 2019年7月1日

教員のちょっと気になる「中国の対米輸出減品目と中国の代替地」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「中国の対米輸出減品目と中国の代替地」を取り上げてご紹介いたします。

先日ジェトロが、米中貿易を品目別に算出した結果を公表しました。中国の米国向け輸出(2019年第1四半期)を金額の多い順に並べ、前年同期比減となった上位5品目(貿易コード小分類、HSコード6桁)を取り上げています。

さらに、これら品目の中国から米国への輸出額の変化だけでなく、同品目で米国が輸入を増加させた国・地域の増減率もリストアップしています。

中国が輸出減の打撃を受けた産業・品目は何でしょうか。また対米輸出の代替地となって恩恵を受けた国・地域はどこなのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。

まず、中国にとって対米輸出減の影響が最も大きかった品目は「スマートフォンなどの携帯端末」で、輸出額は75.7億ドル(’18年1Q)から59.9憶ドル(‘19年1Q)へと15.8億ドル減、対前年同期比△20.8%となっています。次いで影響が大きかった品目が、「機械部品、付属品」で対前年同期比△48.8%となっており、「履物(テニスシューズ、バスケットシューズ、体操シューズ、トレーニングシューズなど)」(同△8.7%)、「腰掛(椅子、アップホルスター)」(同△13.5%)、「履物(スキー靴、スニーカー、スポーツ用シューズなど)」(同△7.7%)と続きます。

次に、中国の対米輸出減に伴い、中国からの代替地として米国が輸入を増やした国・地域を見てみます。

「スマートフォンなどの携帯電話端末」では、米国のベトナムからの輸入が対前年同期比172.2%増と最も増加率が高く、次いで日本(72.3%増)、韓国(38%増)と続きます。「機械部品、付属品」では、対台湾輸入が186.3%増と最も増加率が高くなっています。「履物(テニスシューズ、バスケットシューズ、体操シューズ、トレーニングシューズなど)」では、対ミャンマー輸入が296.1%増と最も高くなっています。

同様に、「腰掛(椅子、アップホルスター)」で対ベトナム輸入が53%増、「履物(スキー靴、スニーカー、スポーツ用シューズなど)」では対ドイツ輸入が15.5%増となっています。

こうしてみると、米国は中国からの輸入代替地として、ベトナムの存在感が高くなっていることが分かります。米中貿易摩擦が起きる以前から、「世界の工場」中国が偏重し、生産拠点の分散「チャイナ+1」の候補地としてベトナムが注目されていましたので、十分に想定できる動きだと言えそうです。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)