業界ウォッチ 2019年7月15日

教員のちょっと気になる「国内ベビーフード市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「国内ベビーフード市場」を取り上げてご紹介いたします。

先日7月初旬に、日本ベビーフード協議会が、2018年のベビーフード生産量統計を公開しました。それによると、‘18年のベビーフード生産量は対前年比8%増の約440億円と、過去最高を記録しました(ベビーフードとは、赤ちゃんの離乳を手助けする目的で市販されている加工食品)。

少子化で出生数が減少しているとされているにもかかわらず、ベビーフード市場が伸びているということになります。

それでは、ベビーフードがどのくらい伸びているのでしょうか。出生数の減少と比較するとどのくらいの伸びていて、どういった商品が伸びているのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。

まず、ベビーフード生産額の推移と、出生数の推移をみてみます。

ベビーフード生産額は、1991年は172億円でしたが、そこから増加トレンドで2000年には約302億円へと増加しています。’01年から統計の取得方法が変わったため、数値が大きく変わりますが、‘01年は392億円で、翌’02年には429億円と400億円台を超えています。そこからは‘08年(373億円)まで増減をしながらも大まかには微減トレンドとなっています。’13年以降は5年連続増となり、‘18年には過去最高の440億円となっています。

一方、出生数は、ほぼ一貫して減少トレンドとなっており、‘91年に122万人だった出生数が、’18年には92万人と約30万人の差があります。

ちなみに、単純計算でベビーフード生産額を出生数で割ってみると、‘91年は新生児一人当たり1.4万円ベビーフードを消費していたことになりますが、’01年は3.3万円 ‘18年には約4.8万円へと大きく増加しています。

次に、品目別市場を見てみると、「おかず・スープ」が最も大きく(‘18年、98億円)、次いで「ベビー飲料」(同93億円)、「主食」(同87億円)、「詰合」(同67億円)と続きます。10年前の’08年と比較すると、「おかず・スープ」、「主食」、「詰合」が大きく伸びていることが分かります。

水や湯を加えて用いる「ドライタイプ」と、調理完成品としてそのまま与えられる「ウェットタイプ」のタイプ別に推移を見てみると、「ドライタイプ」が‘08年の70億円から’18年に50億円へと減少しているのに対し、「ウェットタイプ」が‘08年の257億円から’18年に345億円へと増加しています。

このように見てみると、手間のかからない調理完成品で、「おかず・スープ」、「主食」になるものが中心にベビーフードの利用が増えていることが分かります。こうした背景には、女性の社会進出、共働き世帯増加、男性の育児参加・外出頻度が高まったことが背景にあるとの指摘もあります。

マクロ的に考えると少子化で市場縮小するものと考えられますが、ミクロで市場を細かく見て需要を捉えていくと、少子化の中にも成長市場を見出すことが出来そうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)