執筆:村上昌也(BBT大学院MBA本科修了)
対象科目:サプライチェーン経営論(上原 修 ビジネス・ブレークスルー大学大学院 客員教授、米サプライマネジメント協会(ISM)日本代表理事)
みなさんは、サプライチェーンという言葉から、どういった事を思い浮かべるでしょうか。
実際にサプライチェーンマネジメントに携わっている人なら、具体的なイメージが浮かぶと思います。一方、携わっていない人なら、なかなかイメージが浮かびにくいかもしれません。
サプライチェーンとは、原材料・部品等の調達から、生産、流通を経て消費者に至るまでの一連のビジネスプロセスの事を言います。サプライチェーンマネジメントは、企業の枠組みを超え、調達から販売までの事業者がつながって供給の最大化と効率化を図ることです。
供給の最大化と効率化を図るとは、水道管のつまりを直すようなものと理解して頂ければ、イメージがしやすいと思います。水道の蛇口から水が出ない時、蛇口に至る水道管につまりがないか調べるように、調達から最終消費者への販売までを水道管に見立てて、水道管のつまりを発見して直すのが、サプライチェーンマネジメントです。
また、ここでのマネジメントとは、管理より経営という意味の方がしっくりきます。言い換えれば、サプライチェーンマネジメントとは、一連の価値ある活動を統合し、全体をまとめて競争力を強化するための経営活動です。
それでは、なぜ、私達のようなビジネスパーソンがサプライチェーン経営論を学ぶ必要があるのでしょうか?
これまで、サプライチェーンマネジメントは、効率化による原価低減が主目的でした。しかし、近年は、良い物を安く作るのは当然の事として、企業とサプライヤーが良い関係を構築し、変化する事業環境に素早く対応する事が重要課題となっています。言い換えると、企業の枠を超えたサプライチェーン基盤の構築は、まだまだ大きな潜在的可能性があるため、原価低減だけではなく、企業の競争力強化のための源泉という認識が広まりつつあります。
そのような背景から、サプライチェーン経営論は、サプライマネジメントのエキスパートだけのものだけではなく、多くのビジネスパーソンにとっても必要とされています。サプライチェーン経営論を学び、実践への適用方法を理解し、実践して成果を出す事ができれば、ビジネスパーソンとしてのあなたの価値は格段に向上することでしょう。
サプライチェーンマネジメントの重要性を示す「利は元にあり」という言葉があります。
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「私は過去において成功した会社、商店で、その成功の大きな秘訣が仕入れ先を大事にしたことにあるという例をたくさん知っています」
「なるほど、あの店は成功するはずだ、仕入先を大事にしているから、という事をしばしば感じた事があります」
松下幸之助『「一日一話」仕事の知恵・人生の知恵』PHP研究所 より引用
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「利は元にあり」といっても単に安く買いたたけばよい、というわけではなく、商品を買ってくださるお得意先と同じように、仕入先を大切にしていく事の大切さを説いています。「利は元にあり」と聞いて、有名な近江商人の経営理念である「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」を思い浮かべた人もいるかもしれません。
なぜ、仕入先を大切にする必要があるのか、その理由は、商品を仕入れた後に、あれこれと売り方に苦労するよりも、売れる物を仕入れる方が良いからです。売れない商品を仕入れてしまうと、魔法をかけても売ることはできません。
また、仕入先との協業の結果、安く仕入れる事ができて、普通に売ることができれば儲かります。さらに、安く仕入れて安く売れば、回転が上がり、結果として利が多くなります。
このように、仕入先を大切にする事は、色々な利につながります。
初回の今回は、サプライチェーン経営論が持つ重要性をお伝えしました。次回以降は、サプライチェーン経営論の具体的な内容に入っていきましょう。
村上昌也
BBT大学院本科 修了生
1975年生、和歌山県東牟婁郡出身。
高校卒業後、IT業界でキャリアをスタート。
コンサルティング会社勤務時代、開発プロジェクトのテクニカルリーダーを務め、顧客企業の業績向上に寄与。
その後、複数の企業に勤務し、企業向けシステムの企画・開発・導入支援、自社のIT企画等、様々な立場から企業の課題解決に関わる。
2013年にBBT大学院に入学、2015年MBA取得。
MBA取得後に転職し、事業部長として事業活動推進のみならず、中堅・若手の育成にも情熱を持って取り組んでいる。
趣味はキーボード・ピアノ演奏。ロックバンドコンテストでの受賞歴を持つ。最近はジャズピアノに傾倒し、休日は仲間とセッションを楽しむ。