業界ウォッチ 2019年7月22日

教員のちょっと気になる「国内オートキャンプ・アウトドア市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「国内オートキャンプ・アウトドア市場」を取り上げてご紹介いたします。

今年の7月は日照時間が少なく、夏のレジャーは天候次第といったところですが、キャンプなどのアウトドア活動は、ここ数年盛んになっているようです。

先日7月初旬に、日本オートキャプ協会が、キャンプの状況を分析した「オートキャンプ白書2019―のんびりソロキャンプ-」に関する発表会を行いました。同白書によると、2018年の「オートキャンプ参加人口」は850万人と、対前年比1.2%増と6年連続の増加となったそうです。

それでは、オートキャンプは長期的にみるとどのくらい伸びているのでしょうか。また、キャンプ用品でどのような用具が伸びているのでしょうか。他のスポーツ用品と比べると、アウトドア用品はどのくらいの市場の伸びを示しているのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。



まず、オートキャンプ参加者数を長期推移(1994~2018年)で見てみます。
1994年の1459万人から’96年に1580万人とピークに達し、以降減少トレンドとなり‘08年には705万人とピーク時の半分以下にまで落ち込んでいます。そこからしばらく横ばい傾向となりますが、’13年から増加傾向に転じ、’18年に850万人となっています。

次に、主なキャンプ用品(テント、シュラフ、タープ)の輸入額を見ると、テントは‘96年にピークの90.8億円に達しますが、そこから減少トレンドとなり、’08年に28.8億円にまで落ち込みます。以降は増加トレンドに転じ、‘18年には86.7億円と、ピーク時に近い規模にまで拡大しています。タープは、’98年から増加トレンドとなり、‘18年に過去最高の53.5億円へと拡大しています。

更に、アウトドア用品市場全体の動向(’12~‘19年予測)を、他のスポーツ用品と比べてどのくらいの伸びとなっているのか比較してみます。矢野経済研究所が「スポーツ産業白書」でスポーツ用品分野別の国内市場規模を公表していますが、その中で規模の大きい「スポーツシューズ」、「ゴルフ」、「アウトドア」、「釣り」で比較してみます。

’12年時点では「ゴルフ」が2514億円と最大でしたが、そこから横ばい傾向となっています。「スポーツシューズ」は’12年時点では、「ゴルフ」に次いで2番目の規模(1859億円)でしたが、そこから増加トレンドで‘16年には「ゴルフ」を超え、’19年に3212億円に達すると予測されています。「アウトドア」市場は、‘12年に1636億円でしたが、そこから増加トレンドで’19年に2649億円と、「ゴルフ」の2723億円に迫ってきています。

このように見てみると、90年代半ばにキャンプ・アウトドアのピークの後落ち込んだものの、2010年代以降アウトドア市場が確実に伸びてきていることが分かります。テクノロジー、デジタル製品が全盛となる一方で、人は自然に回帰することを本能的に求めているのかもしれませんね。脱テクノロジー、もしくは自然×テクノロジーといった見方でアウトドア市場に注目するのも良さそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)