マネジメントとビジネストレンドの知見を得るMBAメディア

タグから検索する

大前研一メソッド 2019/07/29

海外から日本に簡単に出稼ぎに行ける「留学」資格



大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学名誉教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

海外から日本に出稼ぎに行くなら、専門的な技能などの必要な就労の在留資格よりも、留学の資格取得が実は簡単です。少子化で収入減の大学、就労目的の学生、人手不足の小売業界の思惑が一致し、日本に出稼ぎのために「留学」する外国人が増えているとBBT大学院・大前研一学長は言います。

一方で、多数の留学生が“所在不明”となっており、留学生を受け入れていた東京福祉大学が文部科学省から指導を受けています。外国人労働者を「留学」などの裏口からではなく真正面から受け入れる制度を整備しないと、コンビニ業界などの人手不足は深刻さを増すと大前学長は言います。

【資料】
留学生所在不明…少子化で収入減の大学、就労目的の学生と思惑一致し…(最終アクセス:2019年7月29日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190725-00010000-yom-soci&p=1

コンビニから中国人留学生のアルバイトが姿を消した!?

私の住む町のコンビニでは、最近、中国人留学生のアルバイトが一気にいなくなった。理由のひとつに、2018年1月に改正通訳案内士法が施行されたことがある。

政府は2020年に訪日外国人旅行者を4000万人とする目標を立て、これに向けて各種の規制緩和を進めている。改正通訳案内士法では、通訳案内士の業務独占規制が廃止され、だれでも有償での通訳案内が可能になった。

それにより、中国からの訪日旅行客をガイドする中国人留学生が増えた。本来、旅行客をクルマに乗せてカネを取ったら、第二種運転免許が必要になるが、「友達が来ているんで案内しています」という言い逃れが横行している。カネのやり取りは、その場では行われていない。

ということで、中国人留学生は、インバウンド相手にボロもうけして、急にリッチになった。そうすると、早い話、コンビニで働く必要がなくなって、いま、コンビニから中国人留学生は払底してコンビニのカウンターの奥の景色も変わってしまった。

「留学生」という名目で日本に出稼ぎ

さらに、次のような問題もコンビニの人手不足の深刻化を加速させている。東京福祉大で留学生が2016~2018年度で1610人も所在不明になっていた問題で、文部科学省は2019年6月、特に所在不明者が多い「学部研究生」の新規受け入れを当面は見合わせるよう指導をした。

同大が受け入れを申請しても、出入国在留管理庁は「留学」の在留資格を付与しない。正規課程と別科の留学生受け入れもこれまで以上に審査を厳格化することにした。この影響で、コンビニからも一部留学生がいなくなってしまったわけだ。

【資料】
東京福祉大系留学生、帰国の動き
名古屋のコンビニ・飲食店「急増したら大混乱に」(最終アクセス:2019年7月29日)
https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019071302000290.html?ref=daily

とはいえ、現在も都市圏のコンビニでは店員の多くが外国人だ。彼らは留学生や実習生を装って来日しているが、本当は出稼ぎ目的で入国している。この流れは止まらないだろう。

政府は外国人が「単純労働」を目的に入国することを認めていないが、きちんとした制度が必要になってくるのではないか。

日本人の働き手は減少。不足人員を外国人が補わなければならないのが日本の現実

この先、インバウンドが増えれば、いろいろな言語での対応も必要になり、外国人アルバイトの活躍の場面が増えてくるだろう。このことを見込んで、コンビニ大手のローソンでは2017年からベトナムなどに研修所を設け、日本留学が決まった学生にコンビニ業務を指南している。

【資料】
日本への留学生にコンビニ業務指南 ローソン、ベトナムに研修所 (最終アクセス:2019年7月29日)
https://www.sankeibiz.jp/business/news/160726/bsd1607260500001-n1.htm

総務省が7月10日に発表した住民基本台帳に基づく2019年1月1日時点の人口動態調査によると、日本人の人口は1億2477万6364人と前年から43万3239人減った。減少は10年連続で減少幅は1968年の調査開始以来、最大だった。

一方、外国人は16万9543人増え、過去最多の266万7199人だった。外国人の生産年齢人口も14万9650人増の226万8941人。

日本人の働き手の不足を外国人が補っている。市町村によっては、外国人の労働者が人口の10%を超えているところもある。このことを真正面からとらえる制度も必要だ。

自治体にとってみれば、インバウンドよりも定住者が増えてくれたほうが、人口に応じて国から配分される地方交付税などメリットが大きい。また、人口減少と高齢化に悩む農村でも、外国人が農業をやってくれるということになると、ギブアップしないで済む。

外国人労働者を前向きにとらえて考えていかなくてはならない時代になったということだ。

※この記事は、『夕刊フジ 大前研一のニュース時評 2019年7月21日』を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学名誉教授。