業界ウォッチ 2019年8月12日

教員のちょっと気になる「NHKの経営指標」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「NHKの経営指標」を取り上げてご紹介いたします。

先日の第25回参議院選挙で、「NHKから国民を守る党」(N国党)が1議席を獲得して、新興勢力として話題を集めています。NHKの政見放送で「NHKをぶっ壊す」という姿が、ネットで話題となり、議席獲得するかどうか注目を集め、実際に同党代表の立花孝志が当選しました。

NHKの受信料の支払い義務に異議を唱え、スクランブル化を主張し、そのシングル・イシュー政党としての存在意義など、様々な話題を呼び起こしています。

各メディア・ネット等では様々な意見が飛び交っていますが、NHKの受信料収入は実際どの位なのでしょうか。NHK契約者数はどのくらいの数で推移しているのでしょうか。また、NHK職員の給与も批判の的となっていますが、実際にどのくらいで推移しているのでしょうか。具体的に数字で確認してみたいと思います。


まず、NHKの事業収入(連結)と受信料収入の推移を見てみます。事業収入で見ると、2005年度は7471億円で、そこから微増・微減しながら概ね横這いトレンドでしたが、’12年度以降増加トレンドとなり、’18年度は8010億円で過去最高となっています。受信料を見ると、こちらも概ね’12年度まで6000億円台前半で概ね横ばいトレンドでしたが、’13年度以降は増加トレンドとなり’18年度には7112億円と過去最高となっています。また事業収入に対する受信料の比率を見ると、’05年度は受信料が80.6%でしたが、’18年度には88.8%と受信料の比率が高まっています。

次に、契約者数の推移を見ると、契約総数は’05年度は3618万件でしたが、そこから増加トレンドで‘18年には4169万件と、この間約550万件増加しています。このうち支払い件数が’05年度の3259件から’18年度の4093件と約830件増加しています。一方、未収数は’05年度359万件から‘18年度76万件と約280万件減少しています。

また、衛星放送契約者数を見ると’05年度の1247件から‘18年度2162件と約915万件増加しています。

NHK(単体)の給与総額の推移を見ると、減少トレンドとなっており、‘05年度1366億円から’18年度1115億円と約250億円減少しています。同じくNHK人員数(要員)を見ると、’05年度は約1.16万人で、そこから減少トレンドで、’13年度(1.01万人)以降はほぼ横ばいとなり‘18年度は1.01万人となっています。平均給与(年間)を見ると、おおむね横ばいから微減となっており、’05年度の1171万円から、‘18年度には1098万円となっています。

こうしてみると、NHK受信契約者数の伸び(未収数の減少)がNHKの受信料収入・事業収入の増加の大きな要因となっていることが分かります。一方、NHKの人件費は、総額では減らしているものの、一人当たりの年収ベースでは大きな減少が見られず、平均年収で1000万円を超えていることが、NHK批判の背景の一つとなっているものと考えられます。

いずれにしても、NHK受信料には各種論点があると思いますが、印象論で語るのではなく、数字でファクトを確認・検証したうえで、論点を議論できると良いですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)