実践ビジネス英語 2019年9月5日

仕事に効くビジネス英語講座〈第2回〉身に付かない英語は“偏り学習”が原因!



執筆者:PEGL事務局清水

「時間とお金とエネルギーを費やして真面目に勉強しているのに、なかなか英語が話せるようにならない」と悪戦苦闘しているビジネス・パーソンの苦労話をたくさん聞きます。

今回のコラムは、見につかない英語学習法について解説しましょう。

不動産英語講師のユキ―ナ・富塚・サントス氏は著書『英語貴族と英語難民』(総合法令出版)の中で、上記のような人々を“英語難民”と名付けています。そうした英語難民から「どうすれば英語ができるようになるのか?」を聞かれることが富塚氏は多いそうです。

そのような時は、逆に「どうやって英語を勉強しているのか?」を聞き返してあげるようにしているのだと言います。その結果として分かったことが富塚氏にはあります。ほとんどの英語難民の人は似たような特徴ある勉強方法に取り組みが偏りがちです。それは「ストック中心」の英語勉強方法です。ストック中心の英語勉強方法をしている場合、どのように改めたら良いのかというヒントを、『英語貴族と英語難民』から解説します。

1.英語の勉強方法には「ストック」と「フロー」がある

ストック中心の英語勉強方法とは、本やインターネット、参考書、英語講座などあらゆるコンテンツから「これは便利な英語の言い回しだ。機会が訪れたときにいつか使ってみよう」と知識として蓄えていくものです。
この英語勉強方法は、知識を積み上げていくことにのみ力を注いでしまいがちになる点に注意しなければなりません。

今本当に自分が一番伝えたいこと、コミュニケーションしたい内容に関心を置いているでしょうか。
学習していることが、伝えたいことやコミュニケーションしたい内容とは別物になってしまっていて、学習しながらも、「ここは学習スキットの中に登場人物のようにではなくて、自分なら本当はこういうことを伝えたいのに」とは思っていないでしょうか。

この英語難民の勉強方法を分かり易く説明する方法として、「ストック」と「フロー」というイメージを使いながら説明しましょう。

以下の【表】にストックとフローを比較してその違いを見てみます。

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■基になるもの
ストック(Stock): 状況、場面がありき
フロー(Flow): 自分の感情、表現したい内容(自分の体験したビジネスシーンに限る)

■実効性
ストック(Stock): 自分がぴったりと適合する表現を見つけることができたときのみ有効
フロー(Flow): 表現したい場面ごとに、表現したい内容を英語にしていくので、常に有効

■適切性(表現として伝わるか?)
ストック(Stock): 状況に適合する可能性は低い
フロー(Flow): 常に100%適合する

■具体例
ストック(Stock):『これだけビジネス会話100』『伝わる表現100』『最低イディオム』『出る単語』
フロー(Flow): 毎日のプレゼンを英語にし、ネイティブチェックを受けたもの、自分の日記をネイティブに修正してもらったもの

 【出典】『英語貴族と英語難民』(総合法令出版)p.85
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ストックは、参考書や英語講座のテキストに載っている状況の会話の流れの中で使っている表現なので、会議や接待、プレゼンなどある特定の場面を想定しています。それらから学ぶ表現は、そのような特定の場面でしか残念ながら使えません。

ストックは「場面やシチュエーションありき」の表現を抜き出し、これらを貯め込んでおく英語勉強方法となるため、ある状況下で自分の意見や感情を伝えようとするときは、過去に積み上げた表現の蓄積の中から切り取って貼り合わせなければなりません。

自分が本当に伝えたい内容を適切に表現することはほとんど不可能と言って良いでしょう。このような切り貼りした表現はネイティブが聴くと「あれ?」と違和感のある妙な表現になりがちです。自分が本当に伝えたい内容を適切に伝えるのには不向きです。

2.「場面やシチュエーションありき」か「自分のフィーリングありき」か

ストックとは対照的な英語勉強方法がフローです。
フローの英語勉強方法では、自分の感情や意見、つまり今本当に自分が一番伝えたい表現にフォーカスします。「場面やシチュエーションありき」ではなく「自分のフィーリングありき」であるところが決定的に違います。

今本当に一番伝えたいという内容を英語で表現するために最適なものです。フローは自分の伝えたい感情からスタートしますから、どのような場面でも間違いなく相手に伝わります。

では、具体的な例で見てみましょう。
明日、仕事でプレゼンテーションをしなければならないとします。ストック中心の英語難民は、グーグルの翻訳や過去に出版された「プレゼンテーション表現集」「プレゼンテーションに欠かせない一言集」などをかき集め、そこから使えそうな表現を切り貼りし、パッチワークのように組み合わせてプレゼンテーション原稿を作ります。

一方、フロー・アプローチでは、まず自分の伝えたい内容を日本語で作成し、それを「伝わる英語」に置き換えていきます。
自分が言いたいときに、伝えたい内容を通じる英語にします。

フロー・アプローチはネイティブ・スピーカーに添削してもらうことが必要になります。特に最適な英単語の選択、言葉の自然な言い回し、時制の対応にはネイティブ・スピーカーのチェックが必要です。

具体的には、自分の伝えたい内 容を表現したいとき、実際の英語の話し言葉ではどう言うのかという観点から、ネイティブ・スピーカーにチェックしてもらいます。

3.「responsible for」と「be involved in」のニュアンスの違い

富塚氏が実際に経験した言い回しとして、「responsible for」と「be involved in」があります。
J社の資産評価プロジェクトに富塚さんが実際に携わったことを英語にしたときのことです。あるプロジェクトに実際の担当者として関わり仕事を仕上げた事を意味したいなら、英語では「be involved in」を使います。この「be involved in」という表現が自分の仕事に対する深い関与を示すということは、学校教育では教えてくれません。

また、この言葉の使い方は英語講座テキストにも出てきません。ネイティブ・スピーカーの先生に添削されるまで、富塚氏は知らなかったと言います。

一方の「responsible for」は「ある事柄や分野、収益や費用に責任がある」ことを意味します。「responsible for」を使うと「社長として全責任を負った」という意味になります。

いかがでしたでしょうか?
「ストック中心の英語学習方法に偏っていた」という心当たりのある方は、明日から「フロー・アプローチの英語学習方法」も取り入れてみませんか?



【参考】英語貴族と英語難民(最終アクセス:2019年9月5日)
http://www.amazon.co.jp/dp/4862804101
pp.84-87、pp.128-130

※この記事は、ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ講座「実践ビジネス英語講座-PEGL[ペグル]-」で毎週木曜配信中のメルマガ「グローバルリーダーへの道」において、2014年12月18日に配信された『今週のコラム』を編集したものです。


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ナビゲーター:清水 愛(しみず めぐみ)
PEGL[ペグル] 英語教育事務局 マーケティング/PEGL説明会、個別ガイダンス担当。2012年BBT入社。前職は海外留学カウンセラー。これまで6,000人を越えるビジネスパーソンと接し、日々ひとりひとりの英語学習に関する悩み解決に向き合いながら、世界で挑戦する人たちの人生に関わる。

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