業界ウォッチ 2019年10月7日

教員のちょっと気になる「国内住宅の空家数・空家率」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「国内住宅の空家数・空家率」を取り上げてご紹介いたします。

先日(9月末)に総務省統計局が「平成30年住宅・土地統計調査」の基本集計結果(確報値)を公表しました。同調査結果によると、全国の空家数は848万戸、空家率は13.6%と過去最高を記録しました。

以前より、人口減少などで空家問題が指摘されていますが、どのような住宅の空き家が増えているのでしょうか。また、地域(都道府県)によって、空家率の違いがどのくらいあるのでしょうか。地理的に何らかの特性があるのでしょうか。実際に数字と地図を見て確認してみたいと思います。

まず、空き家の内訳別に推移を見てみます。空き家は、「賃貸・売却用の住宅」、「二次的住宅(別荘など)」、「その他の住宅」に分かれています。ここで、「その他の住宅」とは、「転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅」や、「建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅」、「空き家の区分の判断が困難な住宅など」を含みます。

「賃貸・売却用の住宅」は、1973年の156万戸から増加トレンドで、2013年には460万戸となっていますが、2018年は462万戸と、伸びが鈍化しています。「二次的住宅」は’78年の13.7万戸から増加トレンドで’03年に49.8万戸とピークに達しますが、以降減少トレンドとなり’18年は38.1万戸となっています。「その他住宅」は’78年の97.7万戸から一貫して増加トレンドで、‘18年には348万戸となっています。

いわゆる空き家問題で、問題視される「放置された空き家」は、この「その他住宅」に該当するもので、この部分が大きく伸びていることが分かります。

次に、都道府県別の空家率を見てみます。2018年の空家率トップは山梨県で21.3%、次いで和歌山県(20.3%)、長野県(19.6%)と続きます。一方、空家率の低い都道府県を見ると、最も低いのは埼玉県で10.2%、次いで沖縄県(10.4%)、東京都(10.6%)と続きます。やはり大都市の空家率が低く出ていることが分かります。

それでは、空家率の高い都道府県にどのような特徴があるのか、地図で確認してみます。地図を見ると、首都圏に隣接する近郊等道府県である山梨県、長野県、栃木、群馬、静岡の空家率が高いことが分かります。大阪に隣接する和歌山県、宮城県に隣接する岩手県、福岡県に隣接する大分県、山口県も空家率が高くなっています。また大都市圏に隣接していないものの、空家率が高く出ているのが四国4県、鹿児島県です。いずれも空家率19%台となっています。

こうしてみると、空き家数・空き家率の増加は、人口減少もさることながら、地方から大都市への流出の影響が大きいとということが分かります。

大きなトレンドがある一方で、空き家対策・活用策では、活用できる空き家がどれなのか、個別具体的に見ていく必要がありそうです。空き家活用をビジネス化するとしたら、空き家自体のポテンシャルと、大都市との位置関係から見出すと良いのかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)