マネジメントとビジネストレンドの知見を得るMBAメディア

タグから検索する

業界ウォッチ 2019/10/21

教員のちょっと気になる「超富裕層」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

9月に富裕層に関する調査機関Wealth-Xによるレポート「2019 World Ultra Wealth Report」が公表されました。同調査は、純資産3000万ドル以上を持つ個人を超富裕層(Ultra High Net Worth Individuals)を対象としたもので、2018年の世界の超富裕層数は26.5万人と前年比0.8%増となったそうです。

超富裕層というと米国に多いのではないかと想像できますが、実際に超富裕層が多い国はどこで、どのくらいの富裕層が存在しているのでしょうか。同じ富裕層でも、国によって保有する純資産額に違いがあるのでしょうか。また、富裕層人口の絶対数ではなく、富裕層がより密集している(人口比で見た富裕層の割合が高い)国・地域はどこでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、超富裕層人口の上位10か国を見てみます。やはりトップは米国で8.13万人となっています。ついで中国(2.5万人)、日本(1.8万人)、ドイツ(1.6万人)と続きます。

また、超富裕層人口の上位10か国で、超富裕層一人当たりの純資産額を見てみると、最も金額が大きいのは中国で1億5100万ドルとなっています。ついで香港(1億3200万ドル)、スイス(1億3200万ドル)、米国(1億2100万ドル)となっています。ちなみに日本は9400万ドルと、上位10か国のうち唯一1億ドル台に達していません。

次に、超富裕層の密集度・密度をみるために、成人100万人あたりの超富裕層数で比較してみます。トップは香港で1364人となっています。ついで、スイス848人、ルクセンブルク699人、シンガポール530人と続きます。

こうしてみると、経済規模の大きい国には超富裕層の絶対数が多いということが分かりますが、富裕層の密集度・密度の高い国は、香港、スイス、ルクセンブルク、シンガポールといった金融が強い小国が上位に来ていることが分かります。

ただし、この数字は2018年の調査結果ですので、今後このランキングが変わる可能性が高いものと予想されます。

最近の香港デモなどの影響により、香港住民の海外移住希望者が増加し、香港からの資金の流出しているという報道が上がっています。香港の海外移住希望者は、カナダ、豪州、台湾、シンガポールなどへの移住希望が多いそうです。(※1)

資金の移動先としては、シンガポールが有力で、ゴールド・マンサックスによると今年6−8月で40億ドルの預金が香港からシンガポールに流れ込んだと試算しています。(※2)

富裕層の動きは、資金の流れ、経済トレンドという観点からも注目する必要がありそうです。香港がどうなるかかというより、香港の富裕層がどこに向かうのかを観察していくと何らかのチャンスを見出せるかもしれませんね。

【資料】(最終アクセス:2019年10月21日)
※1:富裕層が香港から海外に脱出-最も移住したい場所は米国にあらず
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-09/PZ32P1T0G1KY01

※2:香港から4300億円流出も、デモ激化でシンガポールへ-ゴールドマン
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-03/PYS5MP6S972A01

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)