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BBTインサイト 2019/10/29

人事はテクノロジーで進化する〈 第2回 〉日本オラクル社の事例 [前編] オラクルにおけるHRテクノロジー活用



講師:岩本 隆(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授)
ゲスト:二見 直樹(日本オラクル株式会社 人事本部 制度企画・運用グループ シニアマネジャー)

無形資産としての人材(Human Resource)を生かすために、テクノロジーをいかに活用するか考える、シリーズ『人事はテクノロジーで進化する』第2回目は、日本オラクルの二見直樹氏をお招きしてお話を伺います。グローバルに展開するIT企業であるオラクル社は、R&D投資を積極的に進め、同時に過去10年で110社を越える買収をしています。買収により7万7千人の人員を獲得しており、優秀な人材を獲得し、エンゲージメントを高めることはオラクルの成長にとって不可欠な要素となっています。

予測が困難で変化が大きい経営環境下において、人事領域でどのようにテクノロジーを活用し、生産性を向上させているのか、オラクルが捉えている基本概念、具体的な事例をお話しいただき、さらに導入に向けてのアドバイスやHRテクノロジーの未来などを伺いしていきたいと思います。

1.オラクルのビジネス及び背景について

岩本:HR、人事の領域でのテクノロジー活用は、欧米企業が進んでいますが、中でも世界的に最先端を行くオラクルさんから、お話を伺います。

二見:当社は米国オラクル・コーポレーションの日本法人という形で創業しています。オラクル・コーポレーションは、全世界で145カ国に展開し、約13万5,000人の従業員がいます。日本法人は社員数約2,400名で、東京に本社を置いています。ITの総合商社と呼んでおり、さまざまなソリューションを提供している会社です。

二見:さて、ビジネスの背景として、「VUCA World」という言葉があります。
VUCA Worldとは、Volatility(変化)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字で、昨今の世の中全体が見通しが立てにくいだけでなく、非常に変化が激しいことを表しています。
企業経営において、予測が困難で変化が大きい情勢においては、変化が訪れたときに対応していては遅すぎます。それを踏まえた人事の取り組みについても同じことが言えます。
経営資源である、人・物・情報などに関して、我々はインターコネクトという言葉を使います。それらを有機的に結び付け、かつ効果的、効率的に経営に活かすことで、初めて予測できないVUCA Worldに対して柔軟に対応できる組織力をつけることができる、という提言をしています。

岩本:インターコネクトという言葉が出てきましたが、事業部制で経営されてる企業が多い中、VUCA Worldのもと、組織の壁も俊敏に超えねばならない、という理解でよろしいですか。

二見:人や情報が組織の壁で阻害されるのは、企業経営からするとマイナス要素ですね。
もう1つのファクターとして、例えば既存のプロセスでAからBを経てCに結びつけるというようなプロセスが仮にあったとします。この後も説明しますが、採用したい部門の人が採用担当に連絡をして、エージェントに依頼するという、A・B・Cの流れがあるときに、我々の採用方式にはダイレクトリクルーティングというモデルがあります。採用したいマネジャーが自分で募集要項を、システムを通じてオープンにし、直接リクルーティングするという点は、インターコネクトのもう一歩進んだ考え方として、AからCにショートカットするようなイメージですね。

2.人事施策の変遷

二見:下図は当社が現在のクラウドのモデルに移行するまでの変遷です。

二見:2000年から標準化に取り組んでいますが、我々は米国本社を持つ外資企業であり、さまざまな国の現地法人があります。そこで様々なプロセスやポリシーが存在し、それらを統一化することが、まさにこの標準化にあたります。
例えば、人事制度に関しては、日本法人で独自の人員制度があった時代もありましたが、今では人事評価の制度や、賃金の制度はグローバルで統一されています。また、同じころからM&Aが非常に活性化してきたので、標準化を進めたのが一番左側の時代です。
ここでしっかりと人事プロセスなりポリシーを標準化できたことが、加速するM&Aにおいて、スムーズに対応できたり、あるいは次のシステムの移行に関しても、シームレスに移行できたりといった効果があったので、標準化は重要なプロセス変革だったと思います。

二見:標準化の次は、シェアドサービスです。
ある機能をグローバルで統一化し、例えば俗にオフショアと言いますが、全世界の機能をインドあるいは中国でなに集約する、シェアドサービス化というのを進めました。
また、Center of Excellenceとあるのは専門知識を集約したセンター機能化、HRビジネスパートナーというのは事業戦略により近い人事の役割を中心に変化させてきたものです。ダイレクトリクルーティングモデルというのは先ほど申し上げたように、エージェンシーモデルとは対になる言葉です。直接企業が採用・募集活動をして、雇用に結びつける活動を始めました。
当然ながら、それらに伴うシステムの統合・移行もこの時代から始めています。

二見:さらに、従業員のエクスペリエンスと書かれているのは、クラウドを用いたさまざまな分析・統合を背景として、インターコネクトした新たな気づきを与えるような、今までにないスピード感を持ったアジリティを可能にしているというものです。がある。このように人事の制度、人事の役割自体も移行し、今日に至るというのがここでの図示した内容です。変化が訪れてから対応しているのでは遅いということが、まさにここに当てはまります。

岩本:アナリティクスにおいて、人工知能の分野では、オラクルさんの中ではどのくらいのことができるようになっていますか。

二見:例えば人事業務に関しては、何かの調査やサーベイのようなもの、具体的にはマネジメント、マネジャー、管理者に対して、180度や360度サーベイを実施します。その結果自体は今までも当然レーダーチャートで図示するといったものがありました。それらを踏まえて、あなたは研修に出てウィークポイントを補ったほうが良い、という提案がなされます。あるいは評価制度はコンピテンシーモデルを使っていますが、コンピテンシーごとに推奨される研修を提示し、分析から提案・提示につながっているという点が1つ進んでいる部分と考えています。

3.新世代型人事の変革の概要

二見:下図は新世代人事をイメージ化したものです。

二見:私たちはIT企業ですので、戦略的な人事業務のあり方のトレンドをつかむだけではなく、テクノロジーでいかなるソリューションをもたらすか、という面からのトレンドも非常に重要と考えております。
ですので、モバイル&ユーザビリティ、ソーシャル、ビッグデータといったテクノロジーのトレンドを踏まえ、活用することにより、「採用・適材適所」、「タレントマネジメント・リテンション(人材の引き留め)」、「育成・能力開発」、「情報の提供・分析」の4つの項目に対して、ソリューションを提供します。

4.クラウドで統合されたオラクルの人事システム

二見:下図はクラウドシステムで統合された人事の業務、人材サイクルを示しています。

二見:このサイクルは、一番上の「リクルートアンドハイヤー」から始まり、時計回りに進みます。「オンボード」は、入社した社員が次にいかに早く立ち上がって戦力になるか、それから成果を測る「マネージパフォーマンス」、人材育成である「ディベロップエンプロイー」、「レコグナイズアンドリボード」は、いかに評価するかです。そして「ムーブアンドアライン」はキャリアを動かしていく上での異動など、の様々なファクターが人事のサイクルにあります。

二見:それぞれのサイクルごとに、赤い丸が社内システムなどの名称です。
一番上の「Taleo」は、採用システムです。後ほど説明しますが、ダイレクトリクルーティングモデルを実行するための非常に有効なツールです。
パフォーマンスマネジメントは、「Oracle HCM Cloud」を使用しています。また社内のラーニングのプログラムや様々なコンテンツがあります。
リーダーシップ開発は、多面観察ということで、マネジメントの180度サーベイや、部門ごとの従業員のサーベイを実施しています。

二見:キャリアストーリーは「Life@Oracle」がありますが、経験やキャリアなど、様々な背景を持った社員の成功事例を社内で公開したり、キャリア塾みたいな形で、スピーカーの人をお招きして、自らの成功体験を語るディスカッションの場や、ラウンドテーブル的な社員が自由に集う場を設けています。
また先ほどインターコネクトと申し上げましたが、これらシステムをいかに有機的に結び付けるかが重要です。

岩本:前半はVUCA Worldにおいて、インターコネクトが非常に重要になってくるという背景のもと、オラクルにおける人事とテクノロジーについて、その変遷から現時点での業務システムの概要について、くわしく解説していただきました。

後半はこれらを踏まえた具体的な事例や、今後日本企業はどのようにHRテクノロジーに向き合うかについてのヒントなどをいただきます。

※この記事は、ビジネス・ブレークスルーのコンテンツライブラリ「AirSearch」において、2018年2月19日に配信された『人事はテクノロジーで進化する 02』を編集したものです。

講師:岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学・応用科学研究科材料学・材料工科専攻Ph.D.。日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータを経て、2012年より現職。
慶應義塾大学ビジネス・スクールでは、「産業プロデュース論」を専門領域として、新産業創出に関わる研究を実施。HRテクノロジーコンソーシアム代表理事・会長、HRテクノロジー大賞審査委員長、HR-Solution Contest運営委員会委員兼審査員長、(一社)ICT CONNECT 21理事兼普及・推進ワーキンググループ座長、(一社)日本RPA協会名誉会員、山形大学客員教授、株式会社ドリームインキュベータ特別顧問 。

  • <著書>
  • 『HRテクノロジー入門―AI・ビッグデータで加速する働き方改革と人事変革』(ProFuture)
  • 『経営を変える、攻めの人事へ』(HRプロ、共著)

ゲスト:二見 直樹(ふたみ なおき)
日本オラクル株式会社 人事本部 制度企画・運用グループ シニアマネジャー 1993年、国内家電メーカー系ソフトウェア会社に入社。人事部にて労政、任用、 賃金関係等の業務を歴任。 2004年、日本オラクル株式会社に入社。人事企画、福利厚生担当として制度企画、 労務、規程管理、福利厚生などを担当。 先進的なテレワーク制度「Work@Home」の企画導入を主導し、外部講演、セミナー等に 登壇多数。 現在は人事本部にて制度企画・運用グループのシニアマネジャーを務める。