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業界ウォッチ 2019/11/25

教員のちょっと気になる「カット野菜市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「カット野菜市場」を取り上げてご紹介いたします。

近年、「カット野菜」の需要が伸びているようです。先日、農畜産業振興機構が公表した調査結果によると、2018年の千人当たりの「カット野菜」販売額は、この10年で3.3倍に増加しています。

同調査は、全国1058店のスーパーマーケットの2009年~2018年までのPOSデータを収集して、「カット野菜」、「冷凍野菜」、「野菜惣菜」の販売動向をまとめたものとなっています。

「カット野菜」といえば、調理時間を節約したい共働き世帯や、一人暮らし世帯などのニーズを捉えていると言えそうですが、「野菜惣菜」や「冷凍惣菜」と比べてどのくらい伸びの違いがあるのでしょうか。カット野菜の中でも、どのような種類のものが伸びているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、「カット野菜」、「冷凍野菜」、「野菜惣菜」それぞれの販売額(千人当たり)の推移を見てみます。「カット野菜」は2009年に2182円でしたが、そこから増加トレンドで、18年には7236円と、約3.3倍に増加しています。「冷凍野菜」の推移をみると、09年が4548円で、そこから微増・横ばいトレンドで18年は5545円となっています。「野菜惣菜」は、09年に4825円でしたが、そこから緩やかな増加トレンドで、16年の7233円をピークに横ばいトレンドとなり18年は7215円と、「カット野菜」に追い越されました。

次に、「カット野菜」の内訳の推移を見てみます。

「カット野菜」は、4種類に分類されています。
・カット:野菜を単にカットパックしたもの(味付け等の調理のないもの)
・サラダ:サラダ用に複数の野菜をカット・パックしたもの
・惣菜サラダ:サラダに味付け等の調理をしたもの(ポテトサラダを含む)
・キット:鍋セットなど調理に合わせた野菜等のセット

「サラダ」は、09年は795円で、以降増加トレンドで18年には3185円と4倍近くにまで拡大しています。「惣菜サラダ」は09年が686円で、16年(2449円)まで増加トレンドでしたが、以降は減少に転じ、18年は2044円となっています。「カット」は09年(500円)から18年(1312円)まで緩やかな増加トレンドとなっています。「キット」は、09年(201円)から微増・横ばいトレンドでした、ここ数年伸び率が高まっており、14年(333円)から18年(696円)へと約2倍に増加しています。

こうしてみると、「カット野菜」の中でも、「サラダ」用のカット野菜は長期間継続して伸びており、ここ数年でみると鍋セットなどの「キット」の伸びが高くなっていることが分かります。

そのまますぐ食べられそうな「野菜惣菜」や「惣菜サラダ」ではなく、少しだけ手間を要する「サラダ」用カット野菜が中心となっている点が興味深いですね。「手間はかけたくない」けど、「完全に手を抜きたくない」、せめて「一手間くらいはかけたい」といった心理が働いているのかもしれません。

単純にマクロ的なトレンドだけで「消費者は手間をかけたくない」と捉えるのではなく、こうした微妙な消費者心理をどれだけ把握できるかが重要になるのかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)