マネジメントとビジネストレンドの知見を得るMBAメディア

タグから検索する

大前研一メソッド 2019/12/02

船頭の多いLINE+ZHD(ヤフー)連合の行先が見えない



大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学名誉教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

ネット検索などのポータルサイト「ヤフー」などを展開するZホールディングス(ZHD)とメッセージアプリのLINEが経営統合することになりました。利用者数約8000万人のLINEと同約5000万人のZHDの巨大IT企業同士の経営統合についてBBT大学院・大前研一学長に聞きました。

“出生”の異なる寄合所帯のZHDに、LINEの企業文化は馴染むのか?

ZHDとLINEの経営統合は、2019年12月を目途に最終契約を締結し、2020年10月までに完了させることを目指して協議および検討を進めていく。経営統合実施後は、下記の【資料】の図の通り、それぞれの親会社であるソフトバンクと韓国・ネイバーが50%ずつ出資して新会社を設立し、その傘下にZHDを置いてヤフーやLINEを子会社化する。


【資料】経営統合実施後のストラクチャー図
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120191118428053.pdf

利用者はLINEが約8000万人、ZHDのサービスは約5000万人。これにより、通販や金融、SNSを一手に担うトップのIT企業が誕生し、米国の「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や、中国の「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる巨大IT企業に対抗するというのが狙いだ。

LINEの出沢剛社長は「ネット業界は優秀な人材やデータなどすべてが強いところに集約する(“一人勝ち”の)構造。2社が一緒になっても米国の大手企業とはケタ違いの差がある」と危機感を述べ、ZHDの川辺健太郎社長は「最強のワンチームを目指していきたい」と抱負を述べた。ただ、2つの違う魂を持つソフトバンクとネイバーが、対等の形で折半出費して、うまくいくのだろうか。

現在、持株会社となっているZHDの傘下には、eコマース(電子商取引)サービスやポータルサイト運営の「ヤフー」のほか、電子決済サービスの「PayPay」、無料動画配信サイト「GYAO」、電子書籍の販売サイト「イーブックイニシアティブ」、事務用品の通信販売をする「アスクル」、高級ホテルや旅館専門の予約サイト「一休」、そして「ジャパンネット銀行」などがぶらさがる。


【資料】ZHD(ヤフー)の主な事業

ZHDに資金力があったので、事業をどんどん広げてしまっているのだが、これで一体経営をするのは非常に難しいと思う。すでにアスクルの創業社長を電撃解任するなど、人間性、ソフトスキルには疑問符がついている。下手をすると、急速なM&A(企業の合併・買収)で子会社を抱えすぎて、収拾がつかなくなったRIZAPグループのように“空中分解”してしまうかもれない。

商業施設で例えるなら、専門店を集めた渋谷PARCOに、ワンフロア貸し切りのLINEが大型店として入ってきたイメージ

例えば、アスクルを利用してくれる顧客企業に文房具を提供するだけでなく、顧客企業の社員やその家族に対しても文房具を提供できるようにするとしよう。文房具だけでなく、出張や旅行の手配を顧客企業やその社員、さらにその家族に対し提供しようと考えたとき、そこに一休を組み込もうとしても、一休が取り扱うのは高級なホテルばかりでは紹介しづらい。LINEのユーザーもどちらかというと富裕層ではない。アスクル、LINEいずれの場合も楽天トラベルみたいなカジュアルなところがいいわけ。したがって一つずつ吟味してみるとシナジー(相乗)効果も出しにくいと思われる。

そういう中に、LINEはSNSでは利用者数が日本一で一本筋が通っているが、マネタイズ(お金に換えるワザ)ではかなり問題を抱えている。しかも、顔は親会社のある韓国の方を今までは向いていた。そういう意味は、日本の寄り合い所帯であるヤフー(ZHD)と一体化するのは難しいかもしれない。

ZHDの共同CEOには川辺氏と出沢氏が就き、それぞれ代表権を持つ。やはり経営マインドというのは、台湾のEMS(電子機器受託製造サービス)企業「鴻海精密工業」の郭台銘氏のように、1人の創業者的な人間が構想し、指揮、命令ができるようでないといけない。目標としているアリババやテンセントも創業者とその取り巻きが骨格を作った。ソフトバンクも日本のヤフーも創業社長に恵まれた。

強いものと強いものを足しても、1+1が2にならずに、1.6ぐらいで終わってしまうのもよくあること。今回のケースを見ている限り、ZHDに全ての企画機能を集約でもしない限り、商業施設に例えてみると、専門店を集めた渋谷PARCOのようになる可能性が高い。そこにワンフロア貸し切りのLINEが大型店として入ってきた。そんな感じで、うまくパズルがハマるようなことにはならないのではないかと思われる。

※この記事は、『夕刊フジ 大前研一のニュース時評 』2019年11月24日を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学名誉教授。