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BBTインサイト 2019/12/04

【イベントレポート】DXケーススタディ「AIスタートアップが挑戦する社会課題解決」



スピーカー:
梶原康範氏(株式会社スカイディスク CTO)
高井志保氏(株式会社スカイディスク コミュニケーション・マネージャー)
編集/構成:
mbaSwitch編集部

この記事は、BBT大学院とBOND-BBT MBAプログラムが共同開催しているイベントBBTラーニング・コモンズに於いて、2019年9月30日に開催された【DXケーススタディ「AIスタートアップが挑戦する社会課題解決」】の内容を基に編集したイベントレポートです。

スピーカーは株式会社スカイディスク CTOの梶原氏とマーケティング・マネージャーの高井氏の2名。
株式会社スカイディスクは、製造業における”匠” の仕事の現場にAIを導入することで、暗黙知レベルの技術の再現にチャレンジしている新進気鋭のスタートアップです。
(株式会社スカイディスク https://skydisc.jp/

今回のセミナーでは、先述の製造業のケースをはじめとした、 スカイディスク社が取り組む様々な最新のAI事例を中心に、講演を行っていただきました。

果たして、AIビジネスの最前線で何がおきているのでしょうか?

▼Podcastでも配信中!


「匠の技」をAI化する企業・スカイディスクとは(高井氏)

株式会社スカイディスクは、製造業向けAIサービスを提供しています。2013年10月に創業した、今年7期目を迎えるスタートアップ企業です。
本社を福岡と東京に、大阪と名古屋、ベトナムにもオフィスを構え、国内外で事業を展開しています。

従業員69名のうち、33人が「AIエンジニア」です。エンジニアの国籍は、日本以外にもフランス、ブラジル、モンゴルなど、9ヶ国にものぼります。「AIビジネスの黎明期を成し遂げたい」という志を持つエンジニアたちが、世界中から集まった企業です。

熟練の技術者の経験や勘を、AIで解き明かす(高井氏)

スカイディスクは、主に製造業における「匠の技」をAI化する事業を展開しています。ものづくりの現場には、「匠」と呼ばれる熟練の職人のみが知る、経験や勘で成立した暗黙知が多くあります。

日本のGDPの大部分を占める製造業を支えてきたのは、この「匠の技」です。しかし、少子高齢化が急速に進み、労働力不足が深刻になりつつある日本においては、「匠の技」を受け継ぐ人材が圧倒的に不足しています。

私たちは、「匠の経験と勘」という、一見捉え所がないもののメカニズムをAIで解き明かすことで、製造業の技術資産を未来に残したいと考えています。

ヒアリングからAI導入までワンストップで完結

実際のAI導入のプロセスは以下のようになっています。

STEP1:お客様の業務についてのヒアリング、課題の抽出
STEP2:ヒアリングに基づいた目標設定・解決策立案
STEP3:データ作成
STEP4:AI作成

課題感のヒアリングから、AI導入の目的の設定、必要なデータをどのように収集し、人工知能によってどう解析するかまでを、ワンストップで提案しています。

例えば、お客様と一緒に各業務をレビューしながら、AIで解決すべきか否かの判断をします。AIよりもロボットの導入が適している場合もあります。

製品の検品からAI共同開発まで 。製造現場の最先端(高井氏)

スカイディスクでは、これまで人が実施していた難易度の高い業務を、さまざまなAIに置き換えることで、業務効率化を実現しています。
現在は、生産・製造領域のプロジェクトが4〜5割、製品の品質管理のプロジェクトが2割程度です。

私たちが提案する「スマート・ファクトリー」

私たちは、製造工場のあらゆる部品や機械、製造ラインからのデータがAIで解析できる「スマート・ファクトリー」を提案しています。
お客様とひとつのプロジェクトチームを作り、弊社のエンジニアが現場に入りこんで、現場に適したAIを作り上げるスタイルで製造工程の課題を解決しています。

例えば、製造設備へのAI導入を通して、生産製造工程で生まれる不良品の発生要因の分析や、「チョコ停」や「ドカ停」と呼ばれる事故の事前防止が実現可能です。

お客様とAIを共同開発する「スマート・マシーン」

製造設備へのIoT・AI導入だけではなく、共同開発という形でお客様の製品のAI化をお手伝いする「スマート・マシーン」にも注力しています。

お客様の従来の製品にAIを搭載することで、自社製品の競争力をさらに高めることが可能です。

AI化に向いている仕事とは?(梶原氏)

AIはゴールが明確な課題の解決が得意です。ゴールが明確というのは、数値化がしやすいものと、人が正解か否かを判断できるものです。
なぜ、このようなことが得意なのかは、そもそもAIとは何なのかを考えると分かります。

AIの正体は、関数である

 
AIは、みなさんも高校や大学で習った、関数で構成されています。
関数の一番簡単な例は「y=a×b」という形ですが、AIはこの関数をものすごく複雑にしたものです。関数の形やパラメーターによって形成されています。

関数は数値です。そのため、作業の「数値化のしやすさ」が、AI化する際の大きなポイントになります。

関数の「最適化」の必要性

関数で構成されたAIを、最大限に効率よく利用するために「最適化」する必要があります。最適化は、入力と出力を紐づけて、出力されたものが正解に合うように、関数を調整する工程です。

例えば、製品が良品か不良品かを判定したい場合。良品なのに不良品と誤ったラベルが付いていたり、その逆があったりすると、AIが誤ったことを学習してしまいます。そのため、良品と不良品のラベルは、必ず正しく紐づいてないといけません。

AIの最適化作業において、人が正解のラベルを正しくつけられるかが、重要なポイントなのです。

AIの成果を最大限に引き出す製造条件(梶原氏)

では、どのような製造条件にすれば、AIのアウトプットが最大になるのでしょうか。

製造条件を最大化するには、AIの結果に直結している変数の特定が必要です。うまく特定できれば、その変数を調整することで、今後の成果をシュミレーションできるようになります。

そして、作業の中で発見した「人がコントロール可能な変数」について、多くのテストを繰り返し、徐々にベストな状態に近づけていきます。最終的には、お客様に変更条件をレコメンドするレベルまでAIを育てます。

製造業の事例で一番多いのがこのようなパターンです。

トレンドワードは「匠の技」。AIと人間の技の新しい関係(梶原氏)

今、製造業におけるAI活用の大きなトレンドは、「匠の技術」です。
これまでは匠と呼ばれる熟練の技術者のみが、個人的に暗黙知として行ってきた技術を、AIに置き換える事例が増えています。スカイディスクでも、AIを使って原因を分析し、最適化していくプロジェクトが非常に多く、製造業界の大きな流れになっています。

私たちの製造業におけるAIの取り組みは、完全な少人化やコスト削減だけを目指してはいません。AIは、人間の意思決定や判断を補助する予測マシーンだと理解し、付き合っていくのが、さらなるAIの普及に繋がります。

「説明可能なAI」ニーズに応える二大技術(梶原氏)

製造業において、「AIの判断根拠を明らかにしたい」というニーズは、非常に大きいです。このニーズの高まりは、説明可能なAI・XAI (Explainable Artificial Intelligence)とも呼ばれ、2016年以降、論文数が飛躍的に増え、現在も様々な研究がなされています。

ここでは、「説明可能なAI」を実現する、2つの手法を紹介します。

Grad-CAMとは

Grad-CAMは、主にディープラーニングを使った、画像判断などでよく使われている手法で、AIが着目している箇所を特定できる技術です。

従来、AIの画像判断では、背景情報に着目してしまい、誤判定をしてしまうということがよくあります。この場合、AIの判断理由がわからず、誤判断の箇所を特定できないことがよくありました。Grad-CAMを使用することにより、AIが背景ではなく、見るべき箇所を見て判断をしたことを証明できるのです。

LIMEとは

LIMEは、良品不良品の確率が予測された際、どの変数を見て判断しているのかを教えてくれる技術です。

ある数値を入力して、AIがひとつのモデルを予測した場合。これまでは、「AIが予測したから、このモデルが予測されました」としか言えませんでした。しかしLIMEの登場によって、「この変数がこういう状態のなので、不良品につながっています」と、不具合の理由の説明が可能になりました。

的確な要件定義とデータ収集が、AIの判断力を左右する(梶原氏)

私たちがAIのIoT化を進めるためには、まず要件の検討が必要です。そして、分析・仮説・検証のサイクルを、いかに早く確実に行うかがポイントとなります。中でも「何を用いて、何を作るのか」を明確にする、要件定義は非常に重要です。

取得データは初期段階で絞り込む

どのようなデータが、どれくらい存在し、何を目的に行うのか。要件定義をする際、まず仮説を立てます。そして、何を達成すればプロジェクト成功といえるのかを、最初に把握しておきます。

AIの基礎となるデータがない場合は、データを取るところから始める案件もあります。
予測したい結果に対して必要な情報がないデータを、どれだけ集めても無意味です。そのため、データの収集前には、どのデータを取れば目的を実現できそうか、データの選定が必要です。

有用なデータとそうでないデータ

有用なデータとは、インプットとアウトプットが紐づいたデータセットです。
例えばインプットでは、温度や流量、振動、圧力。アウトプットでは人の判断結果などです。

逆に、適していないデータとは、データのインプットとアウトプットが紐づいていないデータです。また、信頼できなかったり、値の欠けが多いデータ、取得時間の間隔が不揃いであったり開きすぎているデータなども適していません。

良品・不良品の違いがデータに現れているかなど、予測したいことに対して必要なデータがきちんと入っているかが、AIの判断に大きな影響を与えます。

開発工程を刻むことがプロジェクトを成功に導く(梶原氏)

開発を進める際に重要なのが、プロジェクト開始から実運用に至るまでを、細かく段階で刻んで取り組むということです。
AIプロジェクトは、失敗するケースもあります。私たちは、いきなり全体に取り掛かろうとせずに、工程を細かく刻んで、そのひとつひとつをクリアしていく方法を推奨しています。

今後も、私たちスカイディスクは、日本の匠の技をAI化し、少子高齢化の社会問題に負けない強いものづくり大国日本を作っていきます。

株式会社スカイディスク https://skydisc.jp/

※この記事は、2019年9月30日に開催されたイベント【BBTラーニング・コモンズ DXケーススタディ「AIスタートアップが挑戦する社会課題解決」】の内容を基に編集したものです。