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大前研一メソッド 2019/12/16

人気飲食店は空席があるのになぜ「満席」と断るのか?



大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学名誉教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

飲食店の中の席は空いているところがあるように見えるのに、「本日満席」と断られる――。不可解な「本日満席」の裏には、大手の飲食店情報サイト(ここでは便宜的に、以下「グルメサイト」と呼ぶ)が自分のところでの予約を増やすため、一部で予約席数を囲い込んでいるらしい実態が明らかになってきました。どういうことなのか、BBT大学院・大前研一学長に聞きます。さらに「グルメサイト以外の理由もある」と、「不可解な空席」の実態を大前学長が明かします。

グルメサイトが飲食店の予約席を囲い込んでいるのか?

2019年11月29日の日経新聞によると、公正取引委員会が「食べログ」「ぐるなび」「ホットペッパーグルメ」などのグルメサイトによる一部レストランなどでの予約座席の囲い込みを問題視し、調査に乗り出しているという。大手グルメサイトの運営会社や飲食店経営者らに聞き取り調査を進めている。公取委は是正を求めるとともに、2019年度内にもまとめる実態調査の報告書に盛り込む方向だ。

【資料】グルメサイトが「予約席囲い込み」公取委、実態調査(最終アクセス:2019年12月16日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52723210Y9A121C1EA2000/

グルメサイト側はアルゴリズムを公開していないが、特定のグルメサイト向けに席数を多く用意するほど「利用者が検索した際の表示順位が上位になる」(大手居酒屋)という声もある。そのため営業日の当日にAグルメサイト経由の予約がなく空席があっても、それをBグルメサイトに開放せず、Aグルメサイト向けに確保し続けることもある。ある居酒屋チェーンの担当者は「グルメサイトに配慮しないと広告効果が見込めない」とこぼす。

グルメサイトは一般的に自社サイトからの予約に対し、飲食店から手数料を受け取っている。このため、いかに多くの予約を取り付けるかが重要になっている。ただ、予約席の囲い込みなどが横行すれば、飲食店としては空席が残る恐れが大きくなるほか、消費者の選択肢も狭め、飲食店や消費者に不利益を与えると公取委はみている。

グルメサイトについては、飲食店が運営会社に会費を払えば「口コミ評価」など店の評価ポイントが自動的に上がる疑念があることについて、独占禁止法上の「優越的地位の乱用」にあたるかどうか、公取委は2019年秋から実態調査を始めていた。

グルメサイトを利用する飲食店の割合は、2017年時点で約7割に達している。これからの忘年会シーズンに多発し、大きな問題となっている「無断キャンセル」による飲食店の損害額は年間2000億円にのぼるとされるが、この無断キャンセル時に利用する予約手段も、グルメサイトが50%で最も多いという調査結果もある。

グルメサイトで店の評価ポイントが高く載ると、やはりお客は行列する。同じような地域で同じような食事を出すとおぼしき店が何軒もあるのに、一方は満席、一方は閑古鳥が鳴いている店がある。地元の人に「どこが違うの?」と聞いたら、「『ぐるなび』に出たんですよ」と言う。

飲食店は、グルメサイトに掲載されるか掲載されないか、グルメサイトでの評価が高いか低いかで集客力に大きな差がつく。そうであるならば、飲食店の評価はフェアにやってほしい。これは徹底的に解明したほうがいい。アンフェアなグルメサイトは、たたきのめしていただきたい。

カウンターの席を詰めずに、常連客用にあえて空けておく人気すし店

同年11月29日に発売された「ミシュランガイド東京2020」から、「3つ星」の評価を12年連続で得てきた「すきやばし次郎本店」(東京・銀座)の掲載が消えたというニュースもあった。掲載されなかった理由は、人気が高じて、一般客の予約ができなくなったからだという。「鮨さいとう」(東京・六本木)も同じ理由からミシュランガイドの掲載外となった。

「すきやばし次郎」はビルの地下の10席ほどの小さなすし店。米国で『次郎は寿司の夢を見る』というドキュメンタリー映画を見たオバマ前米大統領が来日した際、安倍晋三首相がそれを知って招待したということでも有名になった。

予約がとれない店はいくつもあるが、その理由を聞くと、実は行った人がその場で次の予約を取ってしまうことも多いという。やはり常連さんは大事にされ、ほかの人のようには待たないというわけである。

私の知る「1年先しか予約が取れない寿司屋」は少しおかしなことをやっている。2席入れ、1席開けて2席、1席開けて2席としているのだ。だから、その空き席を詰めてもらえば座れる。有名人や常連にはそのようにして席を空けているのだ。

その店は味がよくないから、無理して行こうと私は思わないが、それでも「1年先しか予約が取れない」となると、ますます人気が出る。これも問題だ。

こういったことも含めて、ネットもリアルも思い切って透明化してもらいたい。

※この記事は、『夕刊フジ 大前研一のニュース時評』2019年12月7日を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学名誉教授。