業界ウォッチ 2020年1月27日

教員のちょっと気になる「新型コロナウイルス」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「新型コロナウイルス」を取り上げてご紹介いたします。

中国湖南省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる新型肺炎感染の影響が拡大しています。中国当局の発表によると、同ウイルスによる新型肺炎による死者は1月26日までに56人となり、中国本土の感染患者数は2千人を超えています。

コロナウイルスとは、人や動物の間で広く感染症を引き起こすウイルスで、過去には深刻な呼吸器疾患を引き起こすしたSARS(重症急性呼吸器症候群)や、MERS(中東呼吸器症候群)が類似したケースとして挙げられています。

ちょうど中国の新正月春節の時期に当たり、中国から海外旅行に出かける人が増える時期で、すでに世界各地で感染者の報告が報じられています。日本国内でも、26日時点で感染者4例が確認されいます。

今後、どの位広がるのか、現時点では予測がつきませんが、過去にあったSARSやMERSと比較して、現時点でどの位の感染規模なのでしょうか。死亡者数、致死率はどの位の水準なのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。

まず、感染者数の規模を比較してみます。SARSは8098人で、MERSが2494人となっています。今回の新型ウイルスは中国本土2000人を超えたところとなっています。中国当局の発表によると、感染の疑いのある事例が2684人に上るそうで、現在のペースだと近日中に3千人を超える可能性が高いとの報道もあります。

感染による死亡者数を見ると、SARSが774人、MERSが858人、新型コロナウイルスが56人(1月26日時点)となっています。

致死率(死亡者数/感染者数)をみると、SARSが9.6%、MERSが34.4%、新型コロナウイルスが2.7%(同)となっています。

こうしてみると、今回の新型コロナウイルスは、SARS感染者数の8000人規模よりは少ないとはいえ、現時点でMERS感染者数に近いことが分かります。一方、死亡者数、死亡率と比較すると、新型コロナウィルスは、SARS、MERSよりも低い水準にあることが分かります。

まだ新型コロナウィルス感染拡大のペースがどの位なのか、いつ頃収束するのか見当がつきません。ここから、急拡大する可能性も否定できませんので、気を抜くことはできなさそうです。

とはいえ、今年の夏の東京オリンピック・パラリンピックに影響が出ないように、その前には収束していてほしいものですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)