マネジメントとビジネストレンドの知見を得るMBAメディア

タグから検索する

大前研一メソッド 2020/02/03

全国最多、世田谷区と大田区の空き家は、宿泊施設に使える



大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

全国の空き家数を市区町村別にみると、上位10自治体は下のようなランキングになります。最も空き家数が多いのは東京都世田谷区の約4万9000戸です。2位は同大田区、3位は鹿児島市、4位は大阪府東大阪市で、東京23区や県庁所在地市(鹿児島市、宇都宮市、松山市、岐阜市)が上位に並びました。空き家をうまく有効活用する方法はないものなのか、BBT大学院・大前研一学長に聞きます。

【空き家数上位10自治体のランキング】
第1位 東京都世田谷区 49070戸
第2位 東京都大田区  48080戸
第3位 鹿児島市    47100戸
第4位 東大阪市    44180戸
第5位 宇都宮市    44050戸
第6位 東京都足立区  39530戸
第7位 大阪府吹田市  38540戸
第8位 松山市     38360戸
第9位 岐阜市     38320戸
第10位 兵庫県尼崎市 37130戸

【参考】総務省の2018年住宅・土地統計調査の確定値を基に、日本経済新聞が算出(最終アクセス2020年2月3日)
https://www.nikkei.com/article/

約14%、約7軒に1軒が空き家で、今後も増え続ける

空き家数ランキングから、主要都市ほど空き家問題が深刻化していることがわかる。第1位の世田谷区内では、東急世田谷線沿線や祖師谷地区など、戸建てや小さな集合住宅が集まり、65歳以上の人口の多い地域で空き家が目立つという(上記の日経新聞記事)。

日本の空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は全国平均で約14%にも上る。約7軒に1軒が空き家という状況だ。今後、人口も減って、空き家はさらに増えるだろう。

英国やフランスでは200年前の古い家を購入してリフォームし、何年か住んだ後、また別の中古住宅に移転してリフォームする。日本にはそういう風習がない。いつか空き家になって朽ち果ててしまうのだ。

この空き家問題は、法律を整備しなければどうしようもない。2019年、全国で増えている所有者不明の土地対策として、法務局や地方法務局にいる登記官に所有者を特定するための調査権限を与えるほか、調べてわからない場合は、裁判所が選任した管理者が土地を売却できるようにする新法が成立した。しかし、この新法で解決できる所有者不明の土地はごく一部、1%といわれる。

現在、所有者不明の土地の合計は九州の面積を上回る。2040年には北海道の面積に匹敵するといわれる。これらの未利用資産を活用して、新たなビジネスシステムを生み出さないと、大きな経済的損失になる。

相続しても未登記にしている場合、遺産分割協議が難航したり、固定資産税を払いたくないなどの理由から所有を明確にしないことも多い。

こうした問題については、官報に告知して、一定の期間、所有権が明確でない旨の情報を開示しておき、何もなかった場合には、市町村に所有権を移し、改修して若い人に安く譲るなどして有効活用すればいい。ただ、そういうふうに転換できる法律がない。法律、制度が阻んでいるのだ。

訪日外国人の宿泊施設に、空き家を有効活用すべき

訪日外国人が年間3000万人の時代なのに、欧州諸国に比べて日本には宿泊施設が圧倒的に足りない。1000万人分ぐらい足りない。これを解決するには、空き家を利用し、有料で宿泊させる「民泊」として活用するしかない。

これも2017年に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されたが、営業日数が制限されたり、消防関連など手続きの煩雑さもあって、「規制しよう」という考えが前面に出ている。

空き家の多い日本は、考えを転換しないといけない。使われていない(Idle=アイドル状態にある)リソース(資源・資産)を利用して利益を生み出すことを、私は「アイドルエコノミー」と呼んでいる。

空き家と空き家を使いたい人を結びつけるビジネスを考えるのが、アイドルエコノミー。「空き家問題が大変だ」と騒いでいるが、逆に考えると、ビジネス・チャンスでもある。法の整備とリフォームで空き家を有効活用できれば、大きな経済効果を生み出すことにつながるのだ。

※この記事は、『夕刊フジ 大前研一のニュース時評』2020年1月25日を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学教授。