実践ビジネス英語 2020年2月8日

仕事に効くビジネス英語講座〈第13回〉世界のビジネスパーソンができて、日本人には苦手なこと(後編)



執筆者:PEGL事務局清水

皆さんは、「世界の“フツーの”ビジネスパーソンにはできて、日本のエリートが苦手なこととは何か」と聞かれたら、どんなことを思い浮かべますか?

船川淳志氏と今北純一氏の共著書『そろそろ、世界のフツーをはじめませんか――いま日本人に必要な「個で戦う力」』(日本経済新聞出版社)は、世界のフツーのビジネスパーソンにはできて、日本のエリートにはなかなかできないことを6項目あげています。

前回は、前半(1)~(3)についてお伝えしました。簡単に振り返ってみましょう。

(1)“自分の意見・見解を、複数の人間、しかも専門の異なる初対面の相手にでも、気おくれすることなく、かつわかりやすく伝えることができる。”
(「身内」以外に対する発信力と説明責任能力を備えているか?)

(2)“相手の話を聞いている時に、理解できないこと、不明なこと、興味を持ったことについて率直に質問することができる。”
(周りの顔色をうかがわずに、聞くべきことを聞ける質問力、胆力、そして知的好奇心を備えているか?)

(3)“自分の見解について、異なる立場の他者からの質問や提案を受けた時に建設的な対話を展開することができる。”
(肩書き、年齢、学歴などの属性を理由に、相手の質問を封じ込めたり、反対に、質問をはぐらかしたり、逃げたりせずに向き合える対話力を備えているか?)

今回は後半の(4)~(6)をお伝えします。

1.自らのアイデンティティを考え、教養を深め、視野を広げる力

“(4)自分の国の歴史、文化、宗教、政治動向について相手から聞かれた場合に、バランス感覚を持ちつつ自分の定見を相手にわかりやすく説明できる。”
(「仕事以外の分野では会話が続かない」というのではなく、自らのアイデンティティについて考え、教養を深め、視野を広げているか?)

『今さら英語を勉強しなくても、グローバル・エリートになれる39のルール』(東洋経済新報社)によると興味深いエピソードがあります。
1995年、フランスでハリファクス・サミットという先進国首脳会談が開催されました。サミットが終わった後、パリのエリゼ宮で日仏首脳会談が行われました。出席したのはフランス側は当時のシラク大統領、日本側は村山首相、河野外相、橋本通産相です。

首脳会議だからこそ、意気投合して仲良くなるべく、会話は仕事以外の趣味の話などに及びます。
首脳会議用に、パリのギメ美術館から特別に貸し出された縄文式土器の大型つぼや江戸時代の袖屏風、古代埴輪を前にして、知日家であり親日家として有名なシラク大統領が日本の3閣僚を相手に、古代史から蒙古襲来、さらには源義経がモンゴルに渡ってジンギスカンになったという伝説まで縦横無尽に話しました。

この時、日本史を話題にシラク大統領と対等に会話できたのは、読書家で知られる橋本通産相だけだったと言います。
村山首相も河野外相も黙して語らずだったようです。

首脳会議の様子を取材した当時の産経新聞パリ支局長の山口昌子氏は「教養と教養の真剣勝負。キザと思われても、ウンチクを傾ける必要がある。それも長時間の会話に耐えうる知識量でなければならない」旨を『大国フランスの不思議』(角川書店)で書いています。

このような首脳会談は雲の上の存在ですが、私も“草の根版”を体験して自分を恥じた事があります。

江戸時代に流行ったと言われる「根付け」を皆さんはご存じでしょうか。金属や象牙、木でできた装飾品の一種で、帯に挟んで腰にぶらさげてお守りの役目もしていました。

仕事で仲良くなったロジシア人のフツーのビジネスパーソンがその江戸時代の「根付け」(象牙製)を収集していたのです。「根付け」の収集家の外国人は珍しくないようです。ところが、根付けの話をされてもそれを知らなかった私は、話についてゆけなかったのです。日本人としてかなり恥ずかしい思いをしました。

私のような恥を海外でかかないためには、よその国の文化に関心を持つことも大事ですが、まずは自国の文化について、最低限の知識くらいは身につけておくべきだと今北氏はアドバイスします。

2.多国籍チームや組織の中で、貢献ができる力

“(5)日本人が自分一人という状況でも、多国籍チームや組織の中で、貢献ができる。“
(国籍、宗教、文化的価値観など多様なバックグラウンドを持つ相手と、お互いの価値観を認め合いながら、共同作業ができるか?)

船川氏は一時期、会社を辞めて海外放浪の旅をしていたのですが、海外では外国人相手に武道のインストラクターをしていました。武道は日本人のアイデンティティを示すのに有利ですね。白い袴をはいて外国人に棒術や空手の指導をしていたので、日本人冥利に尽きたといいます。33歳まで武道のインストラクターをしていたことが、その後も船川氏の拠り所になっています。

船川氏が所属していた武道の団体は、インストラクターは白い袴をはき、稽古着も白でした。この白装束は昔なら切腹する際の死に装束そのものです。師範からは、普段の稽古に「切腹する覚悟で臨め」と言われていました。帯を結んで、袴の紐をギュッと結びながら気持ちを高めていくのだと言います。プレゼンやワークショップを行う前にスーツに着替える時の感覚が、全く同じで、まさに腹をくくる、覚悟を持つという感覚だと言います。

多文化組織は異なる価値観や視点がプラスに働きますが、それゆえ、コンフリクト「対立」も起きやすくなります。そうした時に、決して逃げることなく、なおかつお互いの価値観を認め合いながら前に進めていく姿勢が必要となります。それを支える軸は、最後はアイデンティティの問題に行き着くと船川氏は言います。

3.場を和まずユーモアのセンスを磨く力

“(6)ユーモアの感覚、遊び心がある。”
(日本人の仏頂面は英語でもBudda-like stone faceと言われることがあります。場を和まずユーモアのセンス、ウィットの感覚を持ち合わせていますか?)

皆さんは笑いが取るのが得意でしょうか?
笑いを取る効果を否定する人はいないと思います。笑いは一瞬のうちにその場の空気を和ませる効果を持ちます。誰もが持ちたい能力であり、『世界のジョーク集』のような本も出版されているくらいですが、間の取り方は本から学ぶことはできません。皆さんはどのようにして笑いを取るスキルを磨いているでしょうか。

笑いを取る秘策というものはなさそうです。一朝一夕には身につかないでしょうが、普段から笑いを取る能力にも目を向けることから始めればいいのだと船川氏は言います。

いかがでしたでしょうか。
(1)~(6)のいずれも、歳を重ねて経験を積むことによって自然に身につけば良いのですが、残念ながら努力をしないと身につけることができません。問題はどうやって身につけるかです。

「こんな国際的日本人になりたいな」と言う尊敬できる"師匠“を見つけてその人を目標・お手本にするのは、ひとつの方法ではないでしょうか。


【参考】
そろそろ、世界のフツーをはじめませんか―いま日本人に必要な「個で戦う力」
http://www.amazon.co.jp/dp/4532318823/
pp.15-18、206-225

今さら英語を勉強しなくても、グローバル・エリートになれる39のルール
http://www.amazon.co.jp/dp/4492044221

大国フランスの不思議
http://www.amazon.co.jp/dp/4048836757

(最終アクセス:2020年2月7日)

※この記事は、ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ講座「実践ビジネス英語講座-PEGL[ペグル]-」で毎週木曜配信中のメルマガ「グローバルリーダーへの道」において、2015年3月5日に配信された『今週のコラム』を編集したものです。


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ナビゲーター:清水 愛(しみず めぐみ)
PEGL[ペグル] 英語教育事務局 マーケティング/PEGL説明会、個別ガイダンス担当。2012年BBT入社。前職は海外留学カウンセラー。これまで6,000人を越えるビジネスパーソンと接し、日々ひとりひとりの英語学習に関する悩み解決に向き合いながら、世界で挑戦する人たちの人生に関わる。

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