MBAダイジェスト 2020年2月20日

卒業研究(5)問題点の分析と修正でどんどん現実味を増すプラン

『MBAダイジェス』シリーズでは、国内初・最大級のオンラインMBAである「BBT大学院」、ならびに2つの国際認証を持つ「BOND-BBT MBAプログラム」の修了生が、両校で学ぶMBA科目のエッセンスをまとめ、わかりやすく紹介していきます。将来的にMBAの取得を検討している方や、MBAの基礎知識をインプットしたい方はご活用ください。


 
執筆:村西重厚(BBT大学院MBA本科修了、データ・サイエンティスト株式会社 エグゼクティブ・ディレクター)
対象科目:卒業研究(門永宗之助 教授、他)

卒業研究の連載、第5回目です。

前回のヒヤリングフェーズでは研究テーマのビジネスモデルに対して、プロの視点から厳しいご意見をいただいた事をご紹介しました。今回は指摘事項を踏まえてどのように修正したかについて、ご紹介します。前回も述べたように、卒業研究は個人作業であり、テーマによって取り組み方法は様々です。

本連載では筆者の個人的な体験を元にしており、BBT大学院における卒業研究の「正解」ではないことは予めご理解ください。

顧客像が不鮮明では事業化が困難

まずあらためてプロの指摘内容を整理し、事業化が難しい原因を考察しました。

当時を振り返って、代表的なものをいくつか挙げます。

(1)ヒトを集めただけでは、売れるものを作るための「思い」が醸成されない
(2)ステークホルダーか多く、売れる体制を作るにはコストがかかりすぎる
(3)顧客像が不明瞭である

それぞれについて、詳しく説明します。

(1)は、ヒット曲がどうやって生まれるかを考えるとわかりやすいかも知れません。人々の心に残る音楽は、強烈な個性や才能を持った「ヒト」から生まれています。この先、AIなどの進化により、機械が人々の心をつかむ音楽を生みだす時代が来るかも知れませんが、現段階ではまだそのような音楽は生まれていないようです。モノづくりも同じ構図で、個人のパワーこそが重要ということです。

(2)について、私の企画では、デザイナー、設計者、生産者というさまざまなステークホルダーの参加が必要です。従ってそのような人々が参加したくなる動機づけをしなければなりません。インセンティブには多くの場合、コストが伴います。私はゼロイチのベンチャー起業を想定しており、リソースが極端に限られているという前提のため、コストをかけてステークホルダーを集めることは難しいと考えました。

そしてもっとも重要なポイントが(3)でした。ビジネスには当然「顧客」が必要です。私は仕組み構築に目を奪われすぎており、どのような顧客に何を売りたいのかを明確になっていませんでした。

顧客を明確にし、売り物を決める

このような反省を踏まえ、ステークホルダーを少なくし、顧客像を絞ったビジネスから始めることにしました。ビジネスが成長した暁には、当初のイメージだったモノづくりプラットフォームを視野に入れるという方向性に修正をしました。

まず、ターゲット顧客を、モノづくりに興味がある一般ユーザーに絞りました。そしてその顧客に対し、「モノづくりの体験」を商品として提供することにしました。これは自分がそのようなサービスがあれば活用したいという思いがあり、さらに、再度実施したアンケートやインタビューなどを通じて、一定のニーズの可能性を感じたからです。

インターネットでモノづくりが完結することを体感

商品について、少し詳しくご説明をします。

例えば、「液晶卓上カレンダー」のようなミニ家電を想像して下さい。従来は、ミニ家電の部品であるプラスチック製の筐体や電子部品などは、専門店に行かないと手に入りませんでした。しかしモノづくり環境が大きく進化した現代は、個人で簡単にインターネットを活用して試作品を作ることが可能です。動作を司るプログラミングコードなどもインターネット上にたくさん公開されています。

さらに自分だけのオリジナル筐体を設計し、3Dプリンタ制作業者にCADデータをメールすると、データを元に製造された加工品が送られてきます。これらは、実際に自分で実証実験を行い、個人での製作が実現可能であることを確認しました。

そこでミニ家電のパーツ販売と作り方のノウハウを「モノづくりの体験」として商品化し、モノづくりに興味がある一般ユーザーに販売することを事業の第1段階としました。第1段階で一定数のユーザを獲得したら、それらをカスタマイズして、ユニークな製品を発表する場を作ることを第2段階とし、ユニークな製品が生まれたら、量産体制に向けたアクションを取るという流れで当初の計画を実現する、という事業の流れに修正をしました。

問題解決の手法でアイデアを探り、現実味を増していく

当初はモノづくりの場を作る、というアイデアを元に考案したビジネスモデルでしたが、インタビューで厳しいご意見を頂いたことで、場を作るためのプロセスをビジネスモデルに組み込み、現実味が少し増したプランに発展できたように思います。

行き詰まると現状を分解して問題点を探し、新たなアイデアを探って次のステップに進める手法は、BBT大学院の科目にもある『問題解決思考』で学んでいました。

まさしくMBAで学んだことを「総動員」するのが卒業研究という事をこのプロセスで実感しました。

次回は、研究成果をドキュメントにまとめ、審査を受けるステップについてご紹介いたします。


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村西重厚

BBT大学院本科 修了生
データ・サイエンティスト株式会社 エグゼクティブ・ディレクター
一般社団法人起活会 代表理事
1972年 兵庫県神戸市出身
工学部機械科卒業後、メーカーで生産技術部門に従事。
その後、営業部門を経て新規事業部門でWEB事業を立ち上げる。
新規事業の立ち上げ時に経営知識の必要性を感じ、2013年にBBT大学院に入学。
2015年MBA取得。MBA取得後、ベンチャー企業に転職し、営業、マーケティング、資金調達などに携わる。
2017年より、検索ビッグデータ分析を元に企業戦略の立案・推進に携わる一方で、一般社団法人起活会を立ち上げ、起業家支援を行っている。
趣味は登山、クライミング、ギター。

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