業界ウォッチ 2020年3月2日

教員のちょっと気になる「国内企業のテレワーク導入状況」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「国内企業のテレワーク導入状況」を取り上げてご紹介いたします。

先日(2月28日)、日本経済新聞社が同社による主要企業を対象とした緊急調査で、約5割(46%)の企業が、原則または一部でも在宅勤務に切り替えたという調査結果を公表しました。※
(※:同調査は2月27日に136社対象に日本経済新聞社が実施。)

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための企業の取組として在宅勤務・テレワーク導入が話題となっていますが、現在どのくらいの企業が取り組んでいるのか、数字で把握することはなかなか難しいと思います。

それでは、これまでの企業のテレワーク導入状況はどのくらいの割合だったのでしょうか。また業種・企業規模によってどのような違いがあるのでしょうか。テレワークの中でも「在宅勤務」の導入はどの位の割合で進んでいるのでしょうか。実際に数字で確認したいと思います。

まず、企業のテレワーク導入状況の推移(2004~2018年)を見てみます。テレワークを導入済み企業は、2004年に8.5%でしたが、07年から上昇トレンドとなり、09年には19%に達しました。そこから大きく落ち込み、11年には9.1%となりました。以降は再び上昇トレンドとなり18年には再び19%に達しています。

次に、業種別・企業規模(従業者数規模)別でテレワーク導入率がどのように異なるのか見てみます。

業種別で見ると、「情報通信業」が最も高く39.9%となっています。次いで「金融・保険」の37.6%、「製造業」20.8%と続きます。企業規模別で見ると、やはり「2000人以上」が最も高く46.1%、次いで「1000~1999人」34.7%、「500~999人」29.6%と続きます。

テレワーク導入企業がどのようなテレワーク導入形態をとっているのか見てみると、18年は「モバイルワーク」形態が最も多く63.4%、次いで「在宅勤務」37.6%、「サテライトオフィス勤務」11.2%と続きます。この中で伸びが著しいのは「在宅勤務」で、2016年の22%から、18年の37.6%へと、15ポイント以上の伸びとなっていることが分かります。

こうしてみると、「情報通信業」「金融・保険」といった業種で、「従業者数1000人以上」の大企業ではテレワークの導入が進んでいることが分かります。一方、「運輸・郵便業」などの現場を抱える業種で、企業規模の小さい企業ではテレワークが進んでいないことが分かります。

確かに業種・業態・職種・業務内容によっては、なかなかテレワーク・在宅勤務というわけにはいかない仕事もありそうです。その一方で、テレワークを導入しても大きな問題がない業種・職種などは、今回の新型コロナウイルス問題をきっかけに、導入が進んでいくかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)