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大前研一メソッド 2020/03/16

“新型コロナウイルスショック”で株式市場は弱気相場入りか



大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

世界の株式市場の動揺が止まりません。米国ニューヨーク市場のダウ工業株30種平均は、3月12日に前日に比べ2352ドル急落して取引を終了しました。2352ドルの下落幅は、ニューヨーク市場の1日の下落額としては、1987年10月のブラックマンデーを超えて過去最大となりました。史上最高値を付けた2月12日の2万9551ドルから、3月13日の2万3185ドルまでの下落率は21%強となり、「弱気相場」の目安となる20%を超えました。弱気相場に陥るとすると、2008年から2009年にかけてのリーマンショック相場以来のこととなります。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米国企業が相次いで売上高の見通しを下方修正したのが株価下落の要因です。

リーマンショックの時には、サブプライムローンに貸し込んでいた銀行が原因ということがはっきりしていたので、対策を打つことができました。“新型コロナウイルスショック”に対しては対策はあるのでしょうか。BBT大学院・大前研一学長に聞きました。





2月13日に1395ドル高の過去最大の上げ幅で下げ止まったのか?

2月13日、ダウ平均は1395ドル高の過去最大の上げ幅を記録した。連邦準備制度理事会(FRB)が短期金融市場に約158兆円という巨額の資金を供給すると発表したからである。しながら、この資金供給で株価が下げ止まったかどうかは不透明である。というのは、この金融緩和に先立ち、FRBは3月3日に政策金利を緊急利下げした。利下げ幅も通常の0.25%ではなく0.5%とし、企業や消費者の先行き不安に迅速に対応する意思を表した。にもかかわらず、株式市場は一時的に反応しただけで、ダウ平均は下げ止まらなかった。

金利を0.5%下げ、景気を刺激するためにリーマンショック以来の思い切った金融緩和を行ったわけであるが、これは20世紀型の景気刺激策であり、21世紀には通用しないということを金融市場がはっきりと示したことに注意すべきである。トランプ大統領やパウエルFRB議長が執り行う金融政策に対する不安を金融市場側が露わにしたとみるべきである。

米国が利下げや資金供給といった金融緩和を行っても、21世紀型のボーダレス経済においては、米国内に資金需要が乏しく、米国よりも海外に資金需要が存在するのであれば国境を越えて米国外にドルが流出する(ドルキャリー)だけで、米国内の景気刺激にはつながらない。

供給網が寸断され、中国からの納入遅れが発生し、業績見通しを下方修正

米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大で供給網(サプライチェーン)が寸断され、約6割の企業が中国からの部品の納入遅れを指摘した。企業活動に及ぼす影響は長引く恐れがあり、企業の6社に1社に相当する16%の企業が新型コロナを理由に直近の売上高見通しを下方修正し、その修正幅は平均で5.6%だった。80%超の企業が「将来的に何らかの影響が生じる」と回答した。

【資料】米企業の6割、新型コロナで部品納入に遅れ 平均2倍に(最終アクセス:2020年3月16日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56693540S0A310C2000000/

日本国内の自動車や住宅設備メーカーなどでも、中国から部品調達が滞り、受注停止や商品の納期遅延も相次いで発生している。ホンダは全面改良したばかりの小型車「フィット」の納車がワイヤレス充電器の供給が不安定で遅れている。パナソニックはシステムキッチンなどの一部で新規受注を停止した。また、ユニクロを展開するファーストリテイリングは新商品の一部の発売を延期した。中国での工場生産や物流などに遅れが生じたからだ。

せっかく素晴らしい家具を中国に注文して、安くできると喜んでいたらできなくなったという話も聞く。だからといって、お尻を叩きに現地に行ったら、今度は日本に帰ってこられなくなるからどうしようもない。

非常時に備え、自宅学習、在宅勤務に切り替える準備が必要

行事が多く学校にとって一番大切な3月いっぱいの閉鎖が突然決まった。スカイプなどを使えば自宅でも遅延なく学習できるが、教師側の訓練ができていないところが多い。結局しわ寄せが4月からの新年度に先送りされる。

もうひとつ、日本経済新聞が主要企業を対象にした調査によると、46%の企業が原則または一部で在宅勤務に切り替えた。宴席を自粛する企業も8割を超えた。経済への負のインパクトは避けられない。いざとなったときに家で仕事を続けられるよう、どこの会社も事前に確立しておかなくてはならない。このことを強く思い起こさせる状況だと思う。

※この記事は、『大前研一のニュース時評』(2020年3月7日)と『大前ライブ』(2020年3月15日放映)を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学教授。