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大前研一メソッド 2020/03/30

“新型コロナウイルスショック”の影響でバイデン氏が民主党候補指名争いで大躍進



大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

新型コロナウイルスの感染拡大によって、米大統領選に向けた民主党候補指名争いが大きな影響を受けています。

民主党候補指名争いが始まった当初、ジョー・バイデン前副大統領が米大統領選の民主党候補に指名される公算は極めて低いとみられていました。しかし、14州の予備選が集中した3月3日の「スーパーチューズデー」で10州を制し、さらに3月10日の予備選・党員集会でミシガンなど4州を制したことで、党の指名争いの大本命に浮上しました。副大統領として国政を取り仕切ってきたバイデン氏は「行政経験が豊富で、危機管理能力が高そう」だと民主党候補者の中ではみられています。

こうした状況の中、民主党から撤退圧力が高まっていますが、バーニー・サンダース上院議員は、選挙戦を続ける姿勢を崩していません。サンダース氏が巻き返して逆転勝利するのは至難の業です。BBT大学院・大前研一学長がサンダース氏の選挙アドバイザーの立場だとしたらどのように助言するかを聞きました。

大前研一なら「副大統領候補にエリザベス・ウォーレン上院議員を指名」するように助言

バイデン氏は緒戦に苦しんだが、ピート・ブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長が民主党候補指名争いから撤退し、バイデン氏支持を表明し、息を吹き返した。バイデン氏とバーニー・サンダース上院議員との一騎打ちになるが、米国のマスコミは「サンダースが孤立して不利」と主張している。

私がサンダース氏のアドバイザーだったら、この状況を打開するために、副大統領候補にエリザベス・ウォーレン上院議員の指名を勧めるだろう。ウォーレン氏は、民主党候補指名争いから撤退した後、だれを支持するのか明らかにしていない。

このウォーレンという女性は、男をやり込めることにかけては天才的といっていい。民主党の候補者が集まったテレビの討論会でも、ブルームバーグ氏を昔のパワハラ、セクハラ問題でコテンパンにやっつけた。ブルームバーグ氏はマイク・タイソンに殴られたようにボコボコにされた。

さらに、サンダース氏とも取っ組み合いのケンカをする勢いだった。このパワー、女性問題に関して“黒い過去”を持つドナルド・トランプ大統領相手にも通用するのではないか。

サンダース、ウォーレン両氏とも「急進左派」といわれる。ただ、サンダース氏は長い間、バーモント州リッチモンド市の市長だったが、実はここで素晴らしい市政をしていた。

貧困層の住宅問題を解決したり、再生可能エネルギーだけで発電して環境問題にも切り込んでいた。単なる左派ではなく、いろいろな政策を実践してきた。このバーモント市での実績がもっと知られるようになったら、社会主義アレルギーの人たちの心も変わるかもしれない。

78歳という年齢を考えると、登場するのが10年遅かったかもしれないが、若い人たちが熱心に応援しているのを見ていると、金持ち優遇が行きすぎている米国は4年だけでもサンダース氏のような真面目な人にやらせてもいいのではないかと思えてきた。そうすれば、国民皆保険も進むし、恵まれない人たちに対する住宅手当も実現するだろう。

要するに、富裕層からカネ取って、恵まれていない人にやるということ。ニューヨークのウォール街のことを気にしない政策ができるサンダース氏が、ウォール街のことしか考えないトランプ大統領にパンチを浴びせられるウォーレン氏とコンビを組む。この組み合わせは興味深い。

現在、穏健派で黒人票を持っているといわれるバイデン氏が圧倒的に有利だとみられている。しかし、黒人票に強いというのは本当なのか。私は疑問を持っている。バラク・オバマ前大統領の下で副大統領を8年やっていたということが根拠になっているだけ。オバマ氏の背後霊を使いながら戦っているに過ぎない感じがする。

だいたい、バイデン氏は8年の間に何か実績があるのか。息子をウクライナや中国に送り込んで儲けさせただけだ。

なお、バイデン氏は3月15日、副大統領候補に女性を指名する方針を明言した。バーニー・サンダース上院議員とのテレビ討論会で明らかにした。バイデン氏は「私が大統領に選ばれたら、女性を副大統領に選ぶことを約束する」と述べた。司会者に同様の考えがあるか尋ねられたサンダース氏も「おそらくそうする」と女性副大統領選出に前向きな姿勢を示した。サンダース氏は副大統領候補にウォーレン氏を指名するかどうかが注目される。

予備選は延期続出、7月の民主党の党大会の開催も不透明

民主党の候補者選びでは、17日に予備選を行う予定だったオハイオ州が「投票所の安全が確保できない」として急きょ、2020年6月までの延期を決定した。他にも予備選を延期する州が相次いでおり、当面は行われそうにない。

7月13日~16日には民主党が、8月24日~2日には共和党が党大会を開き、大統領選の候補者を正式決定する予定となっている。それぞれ全米の注目を集めるイベントで、11月の選挙に向けてのアピールの場となるはずであるが、両党大会も開催が不透明な状況である。

というのは、ジョージア州(24日)、ルイジアナ州(4月4日)、メリーランド州、ニューヨーク州(同28日)、ケンタッキー州(5月19日)の各州の予備選が、5月以降に延期された。

本来なら経済が好調で株式市場が史上最高値の3万ドルに迫る中で選挙をすれば、現職大統領の再選は固いはずだった。ところが、トランプ大統領の支持率は新型コロナウイルスの感染が拡大する前から常に50%を下回り、世論調査でも公共ラジオNPRの調査(公表)では、トランプ氏の新型コロナウイルスに関する情報を「信用できる」「とても信用できる」と答えたのは37%にとどまり、「あまり信用できない」「全く信用ができない」が60%だった。

人々の健康を脅かす緊急事態が生じたことで、リーダーとしてのトランプ大統領の欠点が浮き彫りになった。民主党の候補者が11月の大統領選で勝つ可能性も高まっている。

※この記事は、『大前研一のニュース時評』3月14日 を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学教授。