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BBTインサイト 2020/04/09

子育てと子どもの教育〈 第3回 〉 生きる力~子どもたちのやる気を引き出す子育てとは



講師: 三谷宏治(金沢工業大学虎ノ門大学院イノベーションマネジメント研究科教授)
編集/構成:mbaSwitch編集部




子育ては試行錯誤の連続ですが、我が子が幸せな人生を送ってくれることが親としての願いではないでしょうか。「子育てと子どもの教育」第3回のテーマは「生きる力」です。子どもたちの生きる力を高めていくために、言語能力を鍛えることの重要性とやる気を引き出す子育てについて、お話ししていきましょう。

1.子育てにおける失敗とは

子育てにおける失敗。それはどの時点で測るのか、もしくは何をもって失敗とするのか、非常に言い難いものですが、明らかな失敗があるとすれば、犯罪でしょう。

非行に走った子どもたちの親は、どのような養育態度であったのでしょうか。
法務省が行った調査によれば、戦後間もない頃は、子どもにご飯を与えることもせず、お金も与えない「放任」が最も多かったようです。その後増加したのは「過保護」です。過保護とは、子どもが「お金が欲しい」と言えば与え、「こうしたい」と言えばその通りにさせてあげることです。

そして最近増加してるのが「過干渉」です。過干渉とは、子どもが「お金が欲しい」と言えば、与えてあげる一方で、使い道について口出しをすることです。もしくは、「これがしたい」と言えば、「こっちのほうがいいんじゃないの」と全て被せてしまうことです。

このような中で、子どもたちは自分の意思を失います。待つばかりになってしまい、そして巻き込まれる形で犯罪に走ってしまうのです。最近では、自分の意思を持たない子どもたちが、リーダーに巻き込まれる形で犯罪に関与するというケースが増加しているようです。

ニート(Not in Education, Employment or Training)と言われる若者たちもいます。高校や大学を卒業しても働こうとしないニートは、偏差値とは関係なく存在しています。

大学生4,000人に「あなたは何が好きですか。」というアンケートを実施しました。
友達と直接遊ぶことが好きな学生たちを「リアル系」とします。そして、友達はいても、インターネットやゲームが一番好きだという学生たちを「ネット系」とします。その学生たちが4年生になったある時点での就職内定率を調べてみると、「リアル系」と「ネット系」で倍近くの差がつきました。

現在日本で募集される職種は、中京地区を除けば、ほとんどがサービス業です。販売業、営業、コンサルティング業、どれも人と接する仕事ばかりです。このような状況の中で、人と接することが苦手だと言っていては、就職先は見つかりません。就職先が見つけやすいのは、圧倒的に「リアル系」です。親が子どもの就職のことを考えるのであれば、偏差値を1上げる努力をするよりも、友達を1人増やすほうが非常に効果的なのです。

2.子育てにおける成功とは

子育てにおける成功とは、子どもたちの自立と幸せでしょう。
幸せの定義は様々あるかと思いますが、一つ挙げるとすれば、自らを幸せであると感じることができるかどうかということではないでしょうか。

2012年、オーストラリアのメルボルン大学の教授が、子どもの幸福度に関する調査結果を発表しました。それは、ある年にニュージーランドで誕生した1,000人の子どもたちを32年間調査し続け、子どもたちが32歳になったときに、「あなたは今、幸せですか」と幸福度を尋ねたものです。

32年分のデータをもとに分析された結果、まず、15歳から18歳当時の学力は、幸福度とほとんど関係がないということが分かりました。一方、幸福度と非常に強い相関があったのは、社会的つながりです。社会的つながりとは、親や兄弟、友達、ボランティア、部活動等、色々あるでしょう。15歳から18歳当時に社会的つながりが強かった子どもたちは、32歳になったときに自らを幸せであると感じる比率が非常に高かったということです。

さらに、遡って5歳から9歳の時点ではどうだったのかということも調べられました。その結果、5歳から9歳当時に言語能力が高かった子どもたちは、上手にコミュニケーションをとることができるので、社会的つながりも強くなり、幸福度も向上するということも分かりました。

3.言語能力の重要性~脱ワンワードを心がけよう

我々人間は言語で動いています。従って、日本語で育てられた子どもたちは日本語で動くようになります。メルボルン大学が行った調査から、言語能力を鍛えることによって社会的つながりが強くなり、そして幸せにもつながるということが分かりました。このような背景から、私は「脱ワンワード」活動というものを推奨しています。「脱ワンワード」とは、「いや」「微妙」「無理」などの一言で会話を終わらせるのではなく、文章で会話をしようという活動です。

この活動は、日本サッカー協会が作成した小冊子がもとになっています。その内容は、「我々は子どもたちの親ではなく、ベストサポーターになろう。」というもので、2つのことが書かれています。
一つ目は、子どもたちがすることに口を出さず、子どもたち自身で決めさせてあげてほしいということです。
二つ目は、子どもたちの言語能力を高めてあげてほしいということです。
日本サッカーを世界一にするために強化すべきこと、それは、一瞬の判断力とコミュニケーション力であるそうです。そのためには、子どもたちの決める力と言語能力を強化する必要があるということが述べられています。

そして、子どもたちの言語能力を強化するために有効であるのが、文章で会話をするということです。例えば、「部屋を片付けなさい。」と言われた時、「無理」という一言で答えれば、そこで会話が終わってしまいます。しかし文章で話すことによって、新たなコミュニケーションが生まれるかもしれません。

我々親の側も、努力が必要です。それは、察しの悪い親になるということです。親は、我が子がまだ幼く言葉を話すことができない場合でも、その子の意図を察することができます。しかし、子どもが成長してもそれを続け、「お茶」と言われればお茶を出すというようなことをしていては、子どもは文章で話すこともできなければ、文章で考えることもできなくなってしまいます。「お茶」と言われても、「私はお茶ではありません。」と言えるような、察しが悪く煩わしい親になることが大切です。

4.「任せる」「褒める」でやる気を引き出す


こちらは仙台市が実施した、子どもの学力向上に関する調査結果です。この調査によれば、最も学力が伸びたのは、自らの学習意欲(内発的動機づけ)のみを励みに学習した子どもたちでした。一方、学習意欲(やる気)がなく、周囲からの叱咤激励やアメとムチ(外発的動機づけ)によって学習した子どもたちの学力は、ほとんど伸びないということが分かりました。

やる気とは、以下の3つが揃ったときに出てくるものです。
一つ目は、「これは自分で決めてやっていることなのだ」という自己決定感です。
二つ目は、「自分は優れている」と思うことができる有能感です。
そして三つ目は、大切な人から認めてもらえているという受容感です。


具体的に何をすればよいのでしょうか。それは、「任せる」ことと「褒める」ことです。そして褒めるときには、自分の価値観で褒めるのではなく、相手の話をよく聞くことが重要です。なぜ褒めるのか、それは相手にその行動を繰り返してもらいたいからです。相手に響く褒め言葉を送るためには、相手の話をまずはよく聞かなければなりません。

子どもを信頼して任せること、そして子どもの話をよく聞いて褒めてあげること、それらが子どもたちの生きる力を高めます。是非子どもたちに積極的にお手伝いを任せ、沢山褒めてあげていただきたいと思います。

※この記事は、ビジネス・ブレークスルーのコンテンツライブラリ「AirSearch」において、2017年3月17日に配信された『子育てと子どもの教育 03』を編集したものです。


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講師:三谷 宏治(みたに こうじ)
金沢工業大学虎ノ門大学院イノベーションマネジメント研究科教授
東京大学理学部物理学科卒業後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)、アクセンチュアにて経営コンサルタントとして働く。
1992年、INSEAD MBA修了。2003年よりアクセンチュア戦略グループ統括。
2006年より、子ども、親、教員向けの教育活動に注力。
金沢工業大学虎ノ門大学院教授の他、早稲田大学ビジネススクール、女子栄養大学客員教授。放課後NPOアフタースクール、NPO法人3Keys理事。

  • <著書>
  • 『ルークの冒険~カタチのフシギ~』(実務教育出版)
  • 『戦略子育て』(東洋経済新聞社)
  • 『お手伝い至上主義!』(プレジデント社)
  • 『新しい経営学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など